第三章
善三の左手のひじから先は背中側に向いていた。善三は痛みにうめきながら、これは左ひじの関節がどうかなったのではと右手で左手を元に戻そうとした。激痛が走る。思わず叫んだ。
「関節がぁ・・・ひじの関節折れでまったぁぁぁ!」
何事が起きたかと部員たちが集まってくる。どうやら善三が大きな怪我をしたらしいと誰かが先生を呼びに行く。キャプテンの法くんが言った。
「ひじの関節折れるどいうのでね外れるどいうのだ」
(どずでも関係ねぇべ)
心の中で善三は思った。
駆けつけた保健室の先生に添え木を当ててもらい、そのまま保健室の先生の車でN外科に運び込まれた。すぐに撮ってもらったレントゲン写真を見ると、左ひじ関節の上の上腕骨がねじれ避け折れていた。関節が外れたのではなかったのだ。ギプスで左腕を固定する手術が始まった。ギプスを巻いてレントゲンを撮り、骨の状況を見る。思わしくなかったようでN医師は電動カッターを取り出し石膏ギプスを切り刻む。カッターの刃が醸し出す熱が善三の左手に伝わる。
(大丈夫なのが、この医者)
善三は少し白髪の混じったN医師の顔を見つめながらそう思った。三度目に巻かれたギプスでやっと骨が固定された。善三はそのままN外科医院に入院することになった。中1の3月から中2のGWあたりまでの2か月にも及ぶ善三の入院生活が始まったのである。そしてこの入院中に思いもしない事件が次から次へと続くのであるがそんなことになるとはつゆ知らず善三はずきずき疼く左腕の痛みと闘っていたのである。 つづく