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第一章
あれは善三が中学一年生の三学期のこと、学年末試験を終えて一週間ぶりに部活ができる嬉しさで、はやる気持ちを抑えながら部室に向かう善三であった。部室で先輩や同学年の部員たちとともに練習着に着替えスパイクを履く。サブバッグから内野手用のグローブを取り出したとき、照が話しかけてきた。
「善三、今日のキャッチボール、わとするべよ。」
「いじゃ。」
善三は同学年の部員たちの中でも体は小さいほうだ。一方照は体も大きく野球もうまい。そんな照からキャッチボールの相手役を指名され善三は嬉しかった。この後まさかあんな悪夢のようなできごとが起きるとはこのときの善三にはまだ思いもよらなかったのだ。
つづく