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転生して十年が経った。悪役令嬢の父になった。  作者: AteRa
第二章:関係の物語

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第45話 子供が産まれるみたいです

 レーアの妊娠が発覚した。

 アリーゼの社交界デビューから一週間も経たずの出来事だった。


 そもそも一ヶ月前くらいから味覚の変化はあったらしい。

 が、本格的に吐き気や倦怠感が来て、その結果、妊娠だということが分かった。


 俺が執務室で仕事をしていると、アリーゼはその噂を聞きつけて飛び込んできた。


「お父様! お母様が、妊娠、というものをしたと聞きました!」

「おおっ、アリーゼも聞いたか。耳が早いね」

「あのあの! それって私に弟か妹が出来るということですよね!?」

「うん、そうなるね。もうアリーゼもお姉ちゃんになるんだよ」


 俺の言葉にアリーゼはわぁっと目を輝かせた。


「お姉ちゃん……! 良い響きです! これはシャルにも報告しなければなりませんね!」


 そう言って彼女はパタパタと俺の執務室を出ていった。

 どうやら彼女は最近、シャルロッテ嬢と文通を交わしているらしい。

 友達が出来てアリーゼも嬉しそうだ。 

 おそらく今回のこともシャルロッテ嬢に手紙で伝えるつもりなのだろう。


 そして入れ替わるようにレーアが入ってくる。


「ねえ、デニス。名前はもう決めてある?」

「名前かぁ……まだ決まってないよ」


 入ってきて早々そう切り出してきたレーア。

 彼女はどこか不安そうだった。


「そっか。決まってないのね……」

「どうしたんだ? いきなり名前のことを聞くなんて」


 俺が言うと、彼女はチラリとこちらを見て、それから視線を逸らしてため息をついて、意を決したように前を向くと話し始めた。


「私、この間アリーゼとお忍びで街に出たじゃない?」

「ああ、そうだったな」

「その時、占い師に二人の運命を占って貰ったんだけど、『そなたらには近々新しい出会いがあるだろう。しかし、その相手を限定するものは慎重に見極める必要がある。さもなければ……』って言われたのよ」


 ああ、なるほど。

 と、俺は納得した。


 今、レーアは新しい子が産まれるということでかなり不安になっているのだろう。

 それでちょうど少し前に言われた占いに今の自分との類似性を見つけ出してしまった。

 新しい出会いが、子供の誕生。

 相手を限定するものが、子供の名前、と結びつけてしまったんだろうな。

 レーアは占いを信じることによって漠然とした不安に形を与え、解消しようとしているのだと思われる。


 ここは俺にとっては異世界だが、未来を見通す魔法なんてものは存在しない。

 いや、一部のハイエルフとか一部の巫女とかが使えるらしいが、それも眉唾だし、そもそもそれが本当にあったとしてもハッキリと未来を見通せるわけじゃないはずだ。


 つまりその占いはかなり真実性は薄いと考えていい。

 しかし俺はそれを真っ向から否定しようとも思わない。

 それでレーアの不安が少しでも解消されるならそれで良いと思うのだ。


「そうか。じゃあ慎重に名前を決めようか」

「ええ、そうしましょう。貴方もじっくりと考えておいてちょうだい」


 そんな会話をしている時、再び部屋を訪れる者がいた。

 セバスだ。

 彼は少し焦った様子で、前のめりになりながら言った。


「デニス様!」

「どうした? そんなに慌てて」

「いえ、それが……ハイエルフのラウラ様がこちらの領地にお越しになるようです!」

「なっ……!?」


 俺は驚き目を見開く。

 エルフというのはそもそも森に暮らす排他的な一族であり、あまり多種族には興味を示さない。

 長寿と言うこともあって人生の経験値が大きく異なり、そもそも話が噛み合わないことが多いのだ。

 それに加え、ハイエルフというのは更に長寿であり、エルフの中でも神聖とされている存在だ。

 長いハイエルフだと数千年も生きているとされ、この世の進退を観測し続けていると聞く。

 故に彼ら彼女らの中に個人というものは存在せず、遙か高みから客観的に人類というものを観測しているという感覚に近いらしい。

 だから森から出てきて、かつ個人の領地に足を運ぶなんて珍しいどころの騒ぎではないのだ。


 しかしレーアは落ち着いたように言った。


「あら、ラウラが来るのね。彼女に妊娠のこと伝えないと。彼女なら色々知っているはずだわ」


 確かにレーアがエルフの里との繋がりを持っていることは知っていた。

 アリーゼに五歳の頃にあげた〈世界樹の宝玉〉のペンダントも、それ経由で入手したものだった。

 しかしレーアがそこまで深く里と繋がっているとは思わなかった。

 しかもラウラが来ることにほとんど動揺していない。

 ということは、かなり親しい仲だというのが分かる。


 ……そういえばレーアと出会う以前の彼女の話はあまり聞いたことがなかったな。

 俺はそんなことをふと思い出すのだった。

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