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転生して十年が経った。悪役令嬢の父になった。  作者: AteRa
第二章:関係の物語

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第43話 絵を描いてたらしいです

 しばらくしてアリーゼたちが戻ってきた。

 そろそろ二人を探しに行ったほうがいいのではないかとみんなで話し合っていたところだった。


「シャルロッテ様!」

「大丈夫でしたか、シャルロッテ様!」

「何があったのですか!?」


 シャルロッテと仲良く談笑していた令嬢たちは彼女を見つけるとそう慌てて駆け寄る。

 そのことに彼女は目を白黒させた。


「皆さん……どうして私の事なんか心配して……」

「どうしてって、私たち友達じゃありませんか!」

「そうですよ! 友達を心配するのは当然のことですから!」


 シャルロッテにみんなしてそう言った。

 その言葉を聞いた彼女は、恥ずかしそうに頬を染め視線を逸らしながら言った。


「そ、そうですわよね。私たち友達ですものね」


 それから思い出したようにシャルロッテは前を向いてこう言う。


「そういえば、新しいお友達が増えましたの。……アリーゼですわ」

「ふふっ、私とシャルロッテは特別な仲ですもんね!」

「とっ、特別な仲とは、どんな仲なのですか!? 普通の友達とは違うのですか!?」

「ふふふっ、さて、どうでしょうね~?」


 そう言っていたずらな笑みを浮かべてアリーゼはシャルロッテの腕を抱きしめた。

 アリーゼの直球な愛情表現に、恥ずかしいやら困惑するやらでシャルロッテはあたふたしてしまっていた。


 しかし……二人が仲良くなれたようで良かった。

 アリーゼもちゃんと友達を作れたみたいだ。


「ね、言ったでしょう? アリーゼは大丈夫だって」


 隣を見ると、レーアがそうどや顔をしていた。

 俺はそれに参ったといった感じで頭を掻きながら言う。


「そうだな。レーアの言うことが正しかったよ」


 そんな風に一件落着し、何事もなかったかのようにパーティーが元に戻り始めた頃。

 セザンヌ公爵が何か大きな板のようなものを持って会場に戻ってきた。

 そしてその巨大な板を抱えて慎重に歩みを進める。

 その姿に、会場にいた貴族たちは不思議そうな表情を浮かべ、次第に彼へと注目が集まっていく。


「お、お待たせした……よよよ、ようやく、完成したから、み、みみ、みんなにお披露目しようと思ってね」


 彼が額の汗を拭いながら誇らしげに言うと、シャルロッテが呆れたように口を開いた。


「お父様、それは一体……?」

「ふふふ……これぞ、芸術の極み。本日の記念すべき日を刻む一枚……な、なな、名付けて――『シャルロッテ、成長の瞬間』」


 そう言って、セザンヌ公爵は大きな板を会場の中央に立てかける。

 そこに描かれていたのは、シャルロッテが窓辺で静かに佇む姿だった。

 しかし、その絵には不思議な点があった。


「あの……これ、去年の私では?」


 シャルロッテが戸惑いながら絵を指差す。

 確かに、今の彼女よりも幼さが残る顔立ちだ。


「う、うむ……そそ、その通り。これは、シャルロッテの10歳の姿を描いたものだからね」

「それってどういう……?」

「実は、わわ、私はこの日のために、い、いい、いち、一年半かけてシャルロッテの絵を描いていたのだよ」


 その言葉に、会場がどよめく。

 シャルロッテの目も見開かれ、言葉を失った。


「ま、待ってください、お父様!? 一年半って、そんなに前から……?」

「そそ、そうとも。貴女が10歳になったあの日、私は思ったのです……。ああ、これは記念すべき瞬間であり、げ、げげ、芸術として残さねばならぬ、と」


 セザンヌ公爵は、まるで神の啓示を受けたかのように両手を広げる。


「しかし。ど、どうしても納得のいく出来にならなかった。10歳のシャルロッテの魅力をか、かか、完璧に表現しようとするほど、その美しさが遠のいていく……。私は、私は、もがき続けて、ようやく完成した……」

「……だから夜更かし続きだったのですか?」

「そそそ、そういうことになるな」

「そそそ、そういうことになるな、じゃありませんわ!!」


 シャルロッテが、思わず大声を出した。

 しかしセザンヌ公爵は気にせず、拳を握り締める。


「そ、そそ、そして、私は気づいたのです……。シャルロッテの10歳の姿は、もう過去のもの。い、いいい、今のシャルロッテこそが、最も美しいのだと」


 セザンヌ公爵は大きく頷きながら、再び絵を指し示す。


「だ、だだ、だから私は。今日、今この瞬間のシャルロッテを描こうと修正を加えようとした。それでせ、せせ、席を外していたんだ」


 再びどよめく会場。

 貴族たちは、セザンヌ公爵の芸術への情熱に呆れながらも、どこか感心している様子だった。


「……お父様、何やってるんですの」


 シャルロッテは頭を抱えた。

 だが、その頬には少しだけ朱が差していた。


「ふふっ、でも素晴らしい絵ですね!」


 アリーゼが笑顔でシャルロッテを見つめる。


「次は私とシャルロッテの二人で描いてもらいたいですね!」

「そ、そんなこと……恥ずかしいですわ!」


 シャルロッテが真っ赤になって叫ぶが、その声には、どこか嬉しさが滲んでいた。


「そ、そそ、それでは。こ、この作品を本日の記念として、城のギャラリーに飾るとしよう」

「えええええええ!?!?!?」


 シャルロッテは大きな声で驚愕する。

 まさかシャルロッテの10歳の姿が、この日の記念として永遠に残されることになろうとは彼女も夢にも思わなかっただろう。

 嬉しいやら恥ずかしいやらで、シャルロッテは顔を赤く染めて両手で覆ってしまうのだった。

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