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転生して十年が経った。悪役令嬢の父になった。  作者: AteRa
第二章:関係の物語

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42/50

第42話 初めてのお友達が出来ました

「アリーゼさんッ! 貴女は……貴女は……何で私が持っていないものを全て持っているのに、他のものまで全て奪おうとするのですかッ!?」


 シャルロッテのその言葉に会場は静まりかえる。

 アリーゼはその言葉の意味が分からないといった感じだ。


「あの……シャルロッテさん。その言葉の意味は一体どういう……」


 困惑しながらそう尋ねるアリーゼに、シャルロッテは悲痛な叫びを上げる。


「それくらいは自分で考えてくださいな!」

「でも……」

「もう貴女たちもお父様も知りません! 勝手にしてください!」


 そう言ってシャルロッテは会場から出ていってしまった。

 彼女の父セザンヌ公爵が追いかけるものかと思っていたが、今は会場内にいないみたいだった。

 取り残された貴族令嬢たちは口々にこう言った。


「なんなのでしょう、あの取り乱しようは……」

「大丈夫でしょうか。私心配です」

「大丈夫よ。私にもあんな時期があったわ」


 心配している子も中に入るが、誰も追いかけようとしない。

 俺はシャルロッテを一人にするのはマズいと思って追いかけようとしたのだが――


 その前にアリーゼが飛び出すように駆け出していた。


 それを見て、俺は追いかけるのをやめる。

 ここはアリーゼに任せてみよう。

 今の俺は、自然とそう思えたのだった。



   ***



 アリーゼの頭の中は困惑で満たされていた。

 だが、それと同時に、追いかけなきゃいけないという焦りに突き動かされていた。

 このままシャルロッテを放っておいたら良くないことになる。

 そんな風に思った。


 廊下を走り、お盆を抱えたメイドたちを避け、城の中庭までやってきた。

 その隅の木陰でシャルロッテは膝を抱えて静かに泣いていた。


「あの……シャルロッテさん……」


 アリーゼは恐る恐る声をかける。

 シャルロッテは顔も上げずに涙声で言った。


「なによ」


 その問いにアリーゼは答えず、シャルロッテの隣に腰を下ろした。

 シャルロッテは今度は逃げ出さずに、顔を上げてアリーゼの方を見た。


「……ドレス、汚れてしまいますわよ」

「構いません。そんなこと言ったら、シャルロッテさんだって同じじゃないですか」


 そう言ってアリーゼは微笑んだ。

 シャルロッテは微笑まれて、頬を赤くすると誤魔化すように顔を背けた。


「……ねえ。シャルロッテさん。どうしてあんなことを言ったのですか?」

「…………」


 アリーゼが聞いてもシャルロッテは答えなかった。

 しかし辛抱強くアリーゼが待っていると、ポツリポツリとシャルロッテが話し始めた。


「アリーゼさん。貴方がお父様にとても愛されていることは、社交界でとても噂になっているのですよ? 知っていますか?」


 アリーゼはシャルロッテの言葉に首を横に振った。


「いえ、知りませんでした……」

「そうでしょうね。貴女、今日が初めての社交界ですものね」


 シャルロッテはそう言って視線を逸らす。


「貴女が羨ましかったのです。家族に愛されて、社交界に出てもいないのに噂に上がる貴女が。そして社交界に出てくるや否や、みんなの注目を掻っ攫っていった。そのことがとても羨ましかったのです」

「そうだったんですね……」


 アリーゼは確かに自分は環境に恵まれていると感じていた。

 でも、あそこまで自暴自棄になるほどだとは、思ってもみなかった。


「ごめ……いえ、そうじゃないですね。シャルロッテさん。私は確かに環境に恵まれていると思います。でもそんな私でも持っていないものがあるんです」


 シャルロッテはアリーゼの方を向いた。

 困惑するシャルロッテにアリーゼはこう言う。


「私にはお友達がいません。同年代で、本音で話せて、気楽な会話が出来る相手がいないのです」

「私にだって……そんなお友達はいませんわ。みんな、私の立場目的で、両親から言われてすり寄ってきているだけですわ。さっき貴女に全て奪われてしまいましたけれど」


 シャルロッテは目を伏せて不貞腐れるようにそう言った。

 そんな彼女の手をアリーゼは優しく包み込んだ。

 再びシャルロッテは顔を上げて、アリーゼを見る。


「ねえ、シャルロッテさん。お友達がいない同士、気が合うと思いませんか?」

「それって……」

「そうです。私たち、お友達になりましょう。いえ、もう本音で話しているわけですし、既にお友達かも?」


 そう言ってアリーゼはくすくすと笑った。

 一瞬シャルロッテはその言葉に虚を突かれたが、すぐに仏頂面になるとこう言うのだった。


「……貴女ってなかなかズルい人なんですね」

「それってお友達でいいってことですか?」

「だから、そういうところがズルいのですわ。……ああもう、分かりましたよ。お友達になりましょう、アリーゼ」

「はい、よろしくお願いしますね、シャルロッテ!」


 そう言ったアリーゼの笑顔はとても華やいで見えて、シャルロッテは何故かそのことが心に充足感をもたらすのだった。

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