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転生して十年が経った。悪役令嬢の父になった。  作者: AteRa
第二章:関係の物語

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第41話 お友達をつくろう

 それからパーティーが始まった。

 立食パーティーなので、自然とグループが出来上がっていく。

 俺は一応侯爵家だが、学生時代にあまり友人を作らなかったので、みんな挨拶だけしてレーアと話している。

 レーアは学生時代から人気者だった。

 彼女はとても明るく、社交的で、友達を作るのが上手だったのだ。


「お父様の周りには誰も来ませんね」


 グサッ。

 アリーゼの純粋な言葉が俺の胸に突き刺さる。

 今日はジンもいないから、俺の周りには完全に誰もいない。


 周囲を見渡してみると、男性は男性、女性は女性で固まっており、子供たちも子供たちで固まっていた。

 まあ、大勢がいる立食パーティーでは、こうなることは必然だな。


 しかし……子供たちは完全に輪を作っていて、あそこにアリーゼが入り込むのは難しいのではないかと思ってしまう。

 チラリとアリーゼの方を見ると、少し寂しそうに子供たちの輪を見つめていた。


 ちなみに子供たちの輪の中心にいるのが、シャルロッテだ。

 彼女と仲良くなれればアリーゼも自然と輪に入れると思うんだが……。

 俺、さっき何故か睨まれてたんだよな。

 あれは一体何だったのだろう。


 ともかく、アリーゼがあの輪に入り込めるようにしてあげた方が良いよな……。

 アリーゼは同年代との絡みがかなり少ない。

 まあ貴族の子息というのは10歳まではみなそんなものだが、アリーゼは俺のせいで一年遅れてしまったのだ。

 それがかなり仇となっている。

 しかしあの輪に飛び込ませるには、破滅フラグという重大な問題が残されていた。


 う~む、と頭を悩ませていると、アリーゼが俺の服の裾を握っていることに気がついた。


「アリーゼ?」

「お父様。私、お友達を作りたいです」


 彼女は俺を見上げながら言った。

 その瞳は不安そうに揺れている。


「そうか、そうだよな。友達、欲しいよな」


 本当に、俺は一体何を迷っているんだ。

 アリーゼが友達が欲しいと思うのは当然じゃないか。

 俺がアリーゼの行動を縛るのではなく、アリーゼのやりたいことを手助けする。

 そう決めたはずじゃないか。

 迷っている暇はない。

 俺はまだご婦人たちと話しているレーアに目配せすると、アリーゼの手を取って子供たちの方に向かうのだった。



   ***



「は、初めまして。アリーゼ・バタイユと申します。よろしくお願いします」


 少女たちが集まって話しているところに来ると、アリーゼはそう挨拶をした。

 少女たちは静かに談笑していたのを中断すると、アリーゼの方を向いた。

 誰だろう、の困惑の表情が7割、値踏みするような鋭い視線が3割、と言ったところか。

 しかしその視線は一人の少女の言葉ですぐに変わる。


「あっ、貴女は以前、ディルク様に決闘でお勝ちになられた方では?」


 その少女はディルクのお披露目会に出ていた子だったみたいだ。

 シャルロッテはディルクよりも誕生日が遅いので、同年代である者の彼のお披露目会には来られていない。

 それに他の少女たちは少し上の歳の子が多そうだったので、お披露目会に参加していなかったのだろう。

 だからディルクとの決闘を間近で見たのは彼女だけだったのだと思われる。


 しかしその少女の言葉で空気がガラッと変わった。

 今までは困惑や値踏みするような視線が多かったのに、すぐに好意的な視線に変わった。


「ああっ、あの、ディルク様に勝利し、彼とお父様の仲を取り持ったとされる、あのアリーゼ様ですか!」

「私も噂でだけは聞いたことがあります。とてもお強いのでしょう?」

「どうやってディルク様にお勝ちになったのですか!? ディルク様もとてもお強いはずなのに!」


 そんな風にわらわらとアリーゼに質問攻めを始める少女たち。

 彼女は最初はわたわたとしていたが、徐々に慣れていき、普通に会話をするようになっていった。

 完全にアリーゼは話題の中心になった。

 良かった、これならすぐに溶け込めそうだ。

 そう思っていたのだが、シャルロッテだけはその輪に加わらず、ずっと俺の方を見つめてくる。


 ……何かあるのだろうか。

 俺は少し気になって、アリーゼが他の少女たちと話している間に、シャルロッテの方にこっそり近づいていった。


「あの、シャルロッテ嬢」


 俺はそう声をかける。

 彼女は仏頂面を崩さずに言った。


「なんでしょうか、バタイユ卿」

「いや……さっきからずっと見つめてくるけど、どうしたのかなぁって」


 俺が言うと彼女は少し気まずそうに視線を逸らした。

 それから彼女はしばらく黙っていたが、不意にポツリと言った。


「バタイユ卿は、アリーゼさんのことをとても愛していると聞きます」


 その言葉に俺は少し驚き目を見開くが、すぐに頷いて言った。


「そうだね。とても愛しているよ」

「やはりそうですか……。それは良いことです。是非、ずっとそのまま愛してあげてください」


 どこか寂しそうな表情でシャルロッテはそう言うとアリーゼを囲む輪の中に入っていった。

 なんだったんだ、一体……。

 そう困惑していると、すぐに少女たちの輪の中から大声が聞こえてきた。


「アリーゼさんッ! 貴女は……貴女は……何で私が持っていないものを全て持っているのに、他のものまで全て奪おうとするのですかッ!?」


 その声の出所は、あろうことかこのパーティーの主役であるシャルロッテで、彼女の前には困惑の表情を浮かべるアリーゼがいるのだった。

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