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転生して十年が経った。悪役令嬢の父になった。  作者: AteRa
第二章:関係の物語

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第40話 芸術と学問の街

 それから数週間後。

 俺はレーアとアリーゼを伴ってセザンヌ領へと来ていた。


 そこまで深くない堀に掛かった橋を渡り、そこまで高くない城壁を潜って街の中に入る。

 ここは学問と芸術の街らしく、様々な古本屋や美術店が建ち並んでいる。

 加えてこの街は国の中心部に位置するため、大した防壁は必要ないというわけだった。


 昼時で露天商があちこちで呼び込みをしている声が聞こえてくる。

 眼鏡をかけた学者みたいな人があっちこっち忙しなく移動したり、キャンパスを立て掛けて絵を描いていたり。

 みんなそれぞれ思い思いの日常を過ごしていた。


「この街はとても騒がしいように感じますね」


 アリーゼは馬車の小窓から外を眺めながらそう言った。


「確かにウチの領地よりは賑やかだね。ウチの領地は国境が近いから、少しピリピリしてるんだろう」

「なるほど。そういった違いがあるんですね」

「ああ。この街は国の中心にあるし、学問と芸術が主な産業だから、かなり穏やかな街なんだと思うよ」


 俺の言葉にアリーゼは感心しながら再び窓の外を見た。


「ねえ、デニス」

「どうしたんだ、レーア」


 そんな時、ふとレーアが声をかけてきた。

 俺は彼女の方を見て首を傾げると、レーアはこう言った。


「そういえば私、セザンヌ公爵家とは会ったことないんだけど、どんな人たちなのかしら?」

「んー、公爵本人はかなり芸術肌の人間でね、ずっとピリピリしてるんだ。そして一回自分の世界に入ってくると戻ってこられない時がある。それに、スランプに陥ったりすると物に当たるらしいんだよ。その場面は見たことがないんだけどね」


 そう言うとレーアは苦笑いを浮かべた。


「それは……なかなか変わった人みたいね」

「そうだね。まあでも、普段は腰が低くて穏やかな人だよ。芸術が絡むと神経質になるけどね」


 そんな話をしていたら、アリーゼが外を見るのをやめて俺に聞いてきた。


「そ、それじゃあ、シャルロッテ様はどんな人なのですか!?」

「ああ、シャルロッテは……会ったことないから分からないかな……」


 一応ゲーム時代の彼女なら知っているし、それなりに俺にも噂は流れてくる。

 が、それで先入観を抱かせてしまうのも良くないと思って、言葉を濁した。

 ちなみにセザンヌ公爵は本当にそのまんまだから、先入観もクソもないと思って先に話したのだ。


「そうですか……。仲良くなれるといいのですけど」


 仲良くなるのは個人的には控えて欲しいところだ。

 それでアリーゼが影響されて悪役令嬢っぽくなってしまったら大変だからな。

 でも、そうやって束縛して、アリーゼに友人が出来ないということの方が絶対に良くない。


 俺はアリーゼを信じると決めたんだ。

 だったらそれを変えることはしない。

 アリーゼならちゃんと善悪を自分なりに考えて、行動できるはずだ。


「と、そろそろ城に着きそうだね」


 俺は窓の外を眺めてそう言った。



   ***



「や、やあ。ひひひ、久しぶりだね、ば、バタイユ侯爵」

「はい、お久しぶりです、セザンヌ卿」


 どこか挙動不審なこの男がダニエル・セザンヌ。

 セザンヌ公爵本人だった。

 長く金色の前髪からは、チラチラと怪しく輝く瞳が覗いている。

 背は高いはずだが、だが酷い猫背なのであまり高くは見えない。

 そんな人だった。


 そしてその隣には仏頂面の少女が立っていた。

 すらっとした少女で、金髪は腰までストレートに伸びている。

 彼女はダニエルに似合わず背筋がちゃんと伸びていた。


「お初にお目に掛かります。シャルロッテ・セザンヌでございます」


 そう言って綺麗なカーテシーを披露した。

 それに対して少し気圧されたのか、オドオドしながらもアリーゼが挨拶する。


「あっ。お、お初にお目に掛かります。アリーゼ・バタイユでございます」


 そんな風にカーテシーを披露するアリーゼを、シャルロッテは一瞥するだけだった。

 彼女の視線は完全に俺に釘付けになっている。

 それは何故だかは分からないが、仏頂面で俺のことを睨んでいるのだ。


「さ、さて。そ、そそそ、それじゃあ案内するから、つ、つつ、ついてきてくれたまえ」


 そう言って先を先導するセザンヌ公爵。

 俺たちはその後に続いて移動するのだが、やっぱりシャルロッテは俺をずっと睨みつけていた。


 日の光が入ってきている廊下を歩きながら俺は考える。

 何故、シャルロッテは俺のことを睨みつけているのだろうか、と。

 チラリと彼女の方を見てみると、サッと視線を逸らしてしまった。


「ば、バタイユ侯爵。さ、ささ、最近身体の調子はどうだい?」


 その唐突すぎる質問に俺は少し虚を突かれながらも答える。


「身体の調子ですか? ちゃんと鍛えているのでとても快調ですよ」

「そ、そそ、そうかい。それはいいことだ。ぼ、ぼぼ、僕は最近夜更かしが続いていてね、ぜ、ぜぜぜ、絶不調だよ」


 セザンヌ公爵はそれだけ言うと再び黙った。

 何が言いたかったんだ……?

 しかし彼はよくこういった会話の仕方をするので、特段気にならなかった。


「さ、ささ、さて、ここが会場だ。君たちが最後だからそろそろ始めるとしよう」


 そう言って俺たちは広間に入れられた。

 この国の貴族でパーティーをすると言ったら立食が基本だ。

 みんな立ちながらメイドの持っているお椀から食事をつまみ、談笑をしていた。


 セザンヌ公爵と俺たちが入ったことによって、俺たちに自然を注目が集まり、その後セザンヌ公爵がパーティー開始の合図を取るのだった。


「そ、そそそそ、それでは、ウチの長女シャルロッテの11歳の誕生日を祝って、ぱ、ぱぱぱ、パーティーを始めようか」

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