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転生して十年が経った。悪役令嬢の父になった。  作者: AteRa
第一章:再生の物語

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第36話 帰還

 そして俺たちはダンジョンコアを破壊すべく、迷宮の最奥までやってきていた。

 そこには巨大な黒曜石のような結晶が静かに輝いていた。


「これが……ダンジョンのコア……」


 アリーゼが息を呑む。

 その表面は不気味な魔力を帯び、脈動しているように見えた。

 これを破壊すれば、この〈世界迷宮〉そのものが崩壊するはずだ。


「アリーゼ、レーア。一緒にやろう」


 俺は剣を構え、彼女たちの横に並ぶ。


「……はい、お父様」

「ええ。これで終わるのね……」


 俺たちは同時に魔力を練り上げ、剣に込める。

 アリーゼの剣は眩い蒼白の光を帯び、俺の剣は漆黒の輝きを放つ。


「せーの……」


 二人で剣を振り下ろした。


 ――ズドォン!!!


 凄まじい爆音と共に、コアが砕け散る。

 瞬間、周囲の空間が崩れ、すべてが白い光に包まれた――。



   ***


 気がつくと、俺とアリーゼはどこかの白い空間に立っていた。

 床も壁もなく、ただ光だけが広がっている。

 レーアもジンもクリストフも、ミシェルさえもいなくなった。


「……お父様?」


 アリーゼが不安そうに俺の袖を掴む。


「大丈夫だ。これは……迷宮が消滅する時の余波かもしれない」


 辺りを見回すが、何もない。

 まるで世界そのものがリセットされたかのような静寂が広がっている。


 しかし……どうして俺とアリーゼだけなのだろう。

 あの部屋に入れたのも、俺とアリーゼだけだった。

 もしかすると、俺が転生者だということに関係するのかもしれない。


 アリーゼが転生者である可能性はないが、転生者である俺の血を唯一受け継いでいる子だからな。

 それが関係するのかもしれない。


 ふと、アリーゼが俺を見上げた。


「ねえ、お父様」

「ん?」

「私、強くなれたでしょうか?」


 彼女の表情は、どこか自信と不安が入り混じったものだった。

 俺は少し考え、ゆっくりと頷いた。


「ああ。強くなった」


 それだけでは足りないと思い、続ける。


「でもな、アリーゼ。お前が強くなったのは剣の腕だけじゃない。心も、だ」

「……心?」

「ああ。お前は今回、一人で俺を助けに来た。レーア……お母さんを見つけ、仲間と協力し、そして自分の力でこの迷宮を終わらせた」

「…………」

「成長したな、アリーゼ」


 アリーゼの目に光るものが宿る。


「お父様……」


 俺は彼女の頭をそっと撫でた。

 そして微笑みながら言った。


「でもな、強くなったからって無茶はあまりすんなよ。お前はまだ、俺の大切な娘なんだからな」


 その言葉に、アリーゼは満面の笑みを浮かべた。


「……はい!」


 その瞬間――白い空間に亀裂が走り、眩い光が俺たちを包み込んだ。



   ***



 気がつくと、俺たちは草原の上に立っていた。

 おそらく〈次元の狭間〉によって消えてしまった西の森が、草原になっているのだ。

 周囲には、ジンやクリストフ、ミシェル、そしてレーアが心配そうにこちらを見ている。

 そして他にも〈世界迷宮〉に残っていたと思われる騎士たちが座り込んで困惑しながら周囲を見渡していた。


「デニス! アリーゼ!」


 レーアが駆け寄り、俺たちを抱きしめた。


「良かった……! 本当に良かった……!」

「……ただいま、お母様」


 アリーゼが微笑み、涙をこぼす。

 その姿を見て、俺も安堵の息をついた。


「……さて、これでみんな揃ったことだし、帰ろうか」


 俺の言葉に、全員が笑顔で頷いた。



   ***



 帰り道。

 揺れる馬車の中で、アリーゼは俺の肩にもたれかかっていた。

 彼女の呼吸は静かで、どうやら疲れから眠ってしまったらしい。


「ふふ、こうやって見ると、やっぱりまだ子供ね」


 レーアがアリーゼの髪を優しく撫でる。


「ああ……どれだけ強くなっても、俺たちの娘には変わりない」


 俺はアリーゼの寝顔を見ながら呟いた。


「それにしても、帰ったらどうするの?」


 レーアが少し意地悪そうに笑う。


「ん?」

「だって、デニス。一年ぶりに帰るんだから、セバスから色々と責められるわよ?」

「…………」


 俺はその未来を想像し、少しだけ背筋が寒くなった。


「まあ、家族が揃ったんだし、多少は仕方ないか……」


 そんな俺の言葉に、レーアはくすくすと笑った。


「ふふ、そうね。これからは、三人でちゃんと過ごしましょう」

「……ああ、そうだな」


 馬車の窓から見える景色が、少しずつ見慣れたものに変わっていく。

 あと少しで、俺たちは本当の家に帰れる。


 夕暮れの中、屋敷の門が見えてきた。

 アリーゼはちょうど目を覚まし、少し寝ぼけた声で呟く。


「……帰ってきたんですね」

「ああ、やっとな」


 屋敷の門が見えると、アリーゼは元気になって、勢いよく走り出す。


「お母様! お父様! 一緒に!」


 俺とレーアは顔を見合わせ、苦笑しながら後を追った。

 門をくぐった瞬間、どこから聞きつけたのか、待ち構えていた執事のセバスがいて、優しく微笑んでいた。


「おかえりなさいませ、アリーゼ様、デニス様……そして、レーア様」

「ああ、ただいま」


 そう言って俺たちは、温かな家へと戻ったのだった。

これにて一旦の完結となります!

ここまでありがとうございました!


娘アリーゼの成長、そして父デニスの成長を楽しんでいただけたでしょうか?

人は時に失敗し、時に悩みながらも、前へと進んでいくものだと僕は思います。

そう言ったことを描きたくて、僕はこの小説を書き始めました。

何かしらこの作品から感じるものが少しでもあれば幸いです。


第二章以降を書くかは、アイデアとモチベが溜まってきてから考えようと思います。


改めて、お読みいただきありがとうございました。

もしよろしければ評価、ブックマーク等をしていただけると幸いです。


それでは、またどこかでお会いしましょう。

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