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転生して十年が経った。悪役令嬢の父になった。  作者: AteRa
第一章:再生の物語

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32/50

第32話 最下層に辿り着きました

 水溜での休憩から更に時間が経過し、俺たちはかなり深くまで潜ってきていた。

 魔物の強さもより強力になっていて、疲弊が徐々に蓄積されていく。

 現在、俺たちはラピットラビット数匹を撃破し、剣についた血糊を拭いているところだった。


「遭遇率は減りましたけど、敵の強さが尋常じゃないですね……」


 クリストフは辟易とした声で言った。

 それにはジンも頷いて同意する。


「ああ。前に潜った時はここまでの強さではなかったはずなんだが……敵が強くなったのか、俺たちがより深層に近づけているのか、どっちなんだろうな」


 そんな言葉にクリストフはわざと明るい声で言った。


「ここはより深層に近づいているってことにしましょうよ! ほら、そっちのほうが希望があるでしょ!」

「確かにな。どうせ俺たちには下へ下へと潜っていくしかないしな」


 そうなのだ。

 俺たちの任務は〈世界迷宮〉のコアの発見および破壊。

 その任務を完遂するまでは帰れない。


 それに……いまだレーアも見つかっていなかった。

 そんなことを思っていたら、ジンも同じ事を思っていたみたいで、少し視線を逸らしながらこう言った。


「それにさ、まだレーアだって見つかってないんだ」

「……確かにそれもそうですね」


 何故ジンが視線を逸らしたのか分からない。

 ジンはもしかすると、レーアが生きていないと思っているのかもしれなかった。

 しかし――俺はレーアが見つかると心から信じている。


「そんな暗い話は終わりにして、ほらほら、次行きますよ、次!」


 こういう時、明るいミシェルはとても助かる。

 俺たちはミシェルに促されるようにして、更に奥地へと移動を開始するのだった。




   ***


 それから更に時が経過した。

 俺たちは最深部らしき場所まで来ていた。

 目の前にはよく分からないモチーフの描かれた門が存在する。

 巨大な竜と……人?

 しかし人にしては手足がやたら長いし、顔の上半分がない。

 それにどこかのっぺりとしているようにも感じた。


「ここにコアがあるんですかね……!?」


 クリストフが興奮気味にそう言う。

 長い時間をかけてようやく辿り着いたのだ。

 テンションが上がるのもよく分かる。

 俺はその門が開くかどうか確かめようと近づいて――


ゴゴゴゴゴッ。


 門は勝手に開いていく。

 誰かがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。

 それは他の誰かだったかもしれないし、もしくは俺だったかもしれない。

 緊張と興奮で自分の感覚が麻痺してきているのを感じた。


「開きましたね……」

「そうだな。開いたな」


 クリストフとジンがそう呟く。

 ミシェルは黙ったまま門の向こう側を眺めていた。

 俺はそんな三人から視線を外すと、門の中を覗き見た。

 そこは今までの洞窟の雰囲気とはうって変わり、完全に人工的な感じで、石レンガの壁が四角く四方を覆っていた。


「ドラゴン……」


 ミシェルがふと誰に言うでもなく呟いた。

 そう。

 部屋の中には巨大な真っ赤なドラゴンが丸まって眠っていた。


 燃えるような赤色だ。

 その大きさはおおよそ10メートル。

 もしかしたら門に描かれていたドラゴンか……?

 しかしだとすればあれは一体何を……?

 原作ゲームにあんなシーンは一度もなかったはずだ。

 それにこんなドラゴンも見たことない。

 もしかしたら、何か異常事態が起こっている可能性があるのか……?


「……入ってみるか」


ジンは硬い声で言った。

そして俺たちの返事も待たず、門の中に一歩足を踏み入れようとして――


バチッ!


と、ジンは弾かれた。


「なっ……!?」


俺は驚きの声を上げる。


入れなかった……?

どうして?

入るには何か条件が必要なのだろうか?


「入れないみたいですね……。どうしてでしょうか……?」


クリストフが首を傾げ、開いた門に近づいていった。

そして彼も触れてみるが、バチッという音と共に弾き返された。


「やっぱり駄目ですね……」

「う~ん、何か条件があるんだろうけど、なんだろうね~」


腕を組み、首をひねりながらミシェルが言った。


「でも門が開いたってことは、歓迎はされているって事なんじゃないかな?」


俺はふとそう思って口を開いた。

それにミシェルはパチンと指を鳴らす。


「最初に近づいたのはデニスさんだったよね!」

「あ、ああ。そうだけど……。もしかして?」

「そうかもしれないです! デニスさんが近づいたから門が開いた。つまり、デニスさんなら中に入れるかも!」


 それは一理あると思った。

 何故そうなのかはよく分からない。

 もしかしたら俺が転生者だからか……?

 俺とジンたちとの違いといえば、それくらいだが……。

 しかし試してみる価値はあるだろう。

 俺はそう思って、門の前に立ち、覚悟を決めると、一歩前へ踏み出した。


「は、入れ……た……?」


 俺は入れたことを報告しようとして振り返り、そこにあったはずの門が消えていることに気がついた。


 ――そう。


 俺は、この最下層の部屋に閉じ込められたのだ。


「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」


 轟音が洞窟内に響き渡り、壁が震え、天井から岩が崩れ落ちる。

 赤い鱗が揺れ、巨大な爪が石床を抉る。

 目を覚ましたドラゴンの瞳が、じっと俺を見据えた。


「……狙われてる」


 本能的に理解した。

 こいつは、俺よりも強そうだぞ、と……。

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