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転生して十年が経った。悪役令嬢の父になった。  作者: AteRa
第一章:再生の物語

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第28話 迷宮探索は大変です

 それからどれほどが経過しただろうか。

 もしかしたら一週間かもしれないし、一ヶ月かもしれない。

 ずっと洞窟の中にいるから体内時計は完全に狂っていた。

 そんな中、俺たちは定期的に水溜の水を飲んで喉を潤わせ、軽い睡眠も取りながら先へと進んでいった。


 俺たちの目的は最下層にあるであろう、コアの破壊だ。

 これだけの大規模な洞窟を維持し、ましてや魔物も溢れさせていることから、国の研究者たちは〈世界迷宮〉の最深部には巨大な魔石があるという結論を導き出した。

 それが本当に正しいのかは分からない。

 それを確かめるために、俺たちは実際にこうして潜り続け、探索を続けている。


「どのくらい来ましたかね……?」


 水溜で汚れたインナーを洗いながらクリストフが言った。

 その横でジンは身体を拭きながらこう言う。


「さあな。俺たちにそれを知る術はない」

「そうですよねぇ……」

「そんなこと考えるな考えるな。憂鬱になるだけだぞ」

「はい、すみません」


 そんな二人から離れたところで、俺とミシェルは夕食を作っていた。

 と言っても、持ってきたなけなしのコンソメと水溜の水、そして魔物の肉で作る簡易的なスープだが。

 別に〈世界迷宮〉内では腹は減らないから、食べる必要は本当はない。

 が、食事というのはストレス発散になる。

 こういった閉じた空間にずっと閉じこもっている場合、かなりのストレスを抱えることになるから、こういった定期的なストレス発散は必要になってくるのだ。


「まだ誰にも出会いませんね」

「この迷宮はとんでもなく広いらしいからな。俺たちが前回入ったときも誰とも出会わなかったな」


 ミシェルの言葉に俺はそう返す。

 結局、帰ってくるまでに誰一人とも他の班と出会わなかったからな。

 出会ってさえいれば……レーアは助けられたかもしれないのに……。


 ふと、当時の記憶が蘇ってくる。

 あの時、〈時空の狭間〉が閉じる直前。

 俺たちは魔物に襲われていた。


 この〈世界迷宮〉にはいくつか古い転移陣が設置してある。

 それを使えば、〈時空の狭間〉が開いている間だけ、地上に戻ることが出来るのだ。

 しかし転移陣を起動させるには10分ほどかかる。

 ギリギリの時間でかつ魔物に襲われていた俺たちは、転移陣を守り起動させながら魔物と戦わなければならなかった。


 その時に魔物と戦うことを買って出たのがレーアだった。

 彼女は一人でその魔物――サイクロプスと戦うことが出来た。

 本当は俺も彼女の手助けをしたかったが、生憎転移陣を起動させるほどの魔力を残しているのが俺しかいなかった。

 そして俺は転移陣に魔力を注ぎ込み起動させ、サイクロプスと戦っていたレーアは間に合わず取り残された。


 その直後、〈時空の狭間〉が完全に閉じ、レーアは取り残されてしまったのだ。


「ふう……スッキリしました」

「調理代わるからお前たちも身体洗ってこい」


 ジンの言葉に俺は続けてこう言う。


「ミシェル。先に行っていいぞ。俺は最後でいい」

「ありがとうございます。……ふう、やっとスッキリできるよー。あー! 身体がベタベタする!」


 そう言って伸びをしながら水辺に近づいていくミシェル。

 戻ってきたジンとクリストフは俺の傍に座って話し始めた。


「いやぁ、久々の飯だな。前に食べたのは何日前だ?」

「前に食べてから睡眠を四回とっているので体内時計が正しければ四日前ですね」

「体内時計は絶対に狂っているとしても、そうか、もうそんな経つのか」


 普通の洞窟であれば腹の減り具合なので、もう少し体内時計が狂わずに済むはずだ。

 が、そもそもここでは外との時間軸が全く違うらしく、体内時計も当然完全に狂うこととなる。

 俺が以前潜ったときは、ほぼ浅瀬にしか行っていないにも関わらず、地上ではほぼ倍の時間が経過していたように思う。

 明らかに体感と実際の時間の進みが違ったからな。

 三日しか潜ってないと思っていたのに、外では三週間も経っていた。


 そんなこんなしていると、スープも出来、ミシェルもスッキリして戻ってきた。

 俺は交代するように水辺に行って、身体を拭きインナーを洗う。

 洗ったインナーは焚き火の上で乾かして、俺は代わりのインナーに着替えてみんなのところに戻った。


「ちゃんとお前の分のスープは残しておいたからな。感謝しろよ」


 俺が戻るとジンがそう言った。

 どうやらみんなは既に食べ終えてしまったらしい。

 早すぎるな。


「てか、当然だろ残しておくのは。感謝も何もないだろうが」


 俺はジンにそう軽く言いながらスープを口に入れる。

 コンソメの濃い味が脳内を駆け巡り、ピリピリと痺れさせる。

 腹は減らないはずなのに、身体に栄養が入ってきている感じがした。

 その後、魔物肉を食い、スープも飲み干す。


「ごちそうさま」


 そうしてひと休憩した俺たちは、見張りを交代でしながら眠りにつくことになったのだった。

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