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転生して十年が経った。悪役令嬢の父になった。  作者: AteRa
第一章:再生の物語

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23/50

第23話 父は娘に歩み寄りたい

「ぐぬぬ……どうしたものか……」


 俺は執務室で唸り声を上げていた。

 その隣に控えるセバスはそんな俺を見て呆れたような声を出した。


「またですか」

「……だって、仕方ないじゃん。初めての反抗期なんだよ? 娘がグレちゃったらどうしようって思うじゃんか」


 まあ——

 本気で嫌われているわけではなさそうだし、15の夜にバイクを盗んで走り出すみたいなことにはならないと思う。

 が、それでも不安なものは不安なのだ!

 というか、そもそもあの可愛かったアリーゼが俺にだけ冷たいのが何か心にくる!

 カイとか他の子供たちには普通に接しているし、何なら俺を除け者にして遊んでる!

 それがちょっと寂しいのだ!


「よしっ!」

「デニス様。あまり変なことはしないほうが……」

「いいや! 俺は寂しい! だからどうにかして、アリーゼに歩み寄りたい!」


 ドドンッと背後に効果音が見えそうな感じで俺は言った。


「題して、アリーゼ仲直り計画だ!」

「……はあ。楽しそうで何よりですね、デニス様。それよりもまずは書類仕事を片付けてくださいね」


 どこか突き放されたようにセバスに言われて、俺は危機感を覚えて慌てて書類に手をつけるのだった。



   ***



「アリーゼ。今日は何してあそ——「お父様。ちゃんと髭は剃ってから来てくださいって言ってるじゃないですか」

「すっ、すまない……うっかり忘れてたよ、ははは」


 アリーゼ仲直り計画実行日初日。

 俺は午後のアリーゼとの遊びの時間に早めに来て準備していた。

 のだが……。


 くそっ〜!

 いきなり印象が悪いぞ!

 でも髭剃ってないのは確かに俺が悪い!

 昨日、どうやってアリーゼと仲直りしようか考えていたら、寝坊して、髭を剃る時間がなかったのだ。


「それとお父様。家の中だからって裸足に靴はやめてください。臭いです」


 うぐっ……臭い、だと……。

 確かに俺ももうアラサー。

 加齢臭とか気になり始める年頃だ。

 しかしこの俺が娘から臭いだなんて言われるなんて、思わなかった……。

 ちくしょう……これからは念入りに足の裏まで洗おう……。


「で、今日ももちろん剣術と魔術です。私は強くなりたいので」

「そっ、そうか! よし、分かった! じゃあいつも通りだな!」

「——ふふっ」


 俺の言葉に、何故かアリーゼが小さく笑った。

 その笑みはどこか昔を思い出すようで……。

 ビックリして俺はアリーゼの方を勢いよく見てしまい、すぐにアリーゼはハッとした後、不機嫌そうな表情に戻ってしまった。


「……何見てるんですか、お父様」

「い、いや、今、笑ったのかなぁ、って」

「笑ってません」

「え? そ、そうだったか「笑ってません」

「あ、はい」


 しかしアリーゼの顔は耳まで真っ赤になっていた。

 笑ってしまったのは不覚だったのだろう。

 どうやらアリーゼは俺にあまり笑顔を見せたくないみたいだ。

 何故だかは知らん。


「お父様。早くしてください」

「はいはい。それじゃあまずは剣術から始めるとするか」


 そして遊び始めた頃にはその不機嫌そうな表情も消えていたが、やはり笑顔だけは頑なに見せようとしないのだった。



   ***



 さて、結局その日はタイミングがなく、作戦を実行できなかった。

 俺の考えた作戦。

 それは二人で何か共通の体験をしよう、作戦だ。

 やっぱり同じ体験をして同じ感情を抱くって、仲良くなるのにとても有効だと思うのだ。

 だから俺はアリーゼと一緒に、近くの山に山登りを行こうと思っていた。


 山登りはいい。

 同じ目標に向かって協力し合う感じとか、山頂に辿り着いた時の壮大な景色と達成感とか。

 後は自然に囲まれるってのも、悪くない。

 現代日本ほどではないが、この城は城塞都市の中心で、あまり自然とかない場所だからな。

 山に行くっていうのは、仲直りにとても適したことなんじゃないかと、俺はずっと前からそう思っていた。


「というわけで、アリーゼ。山登りに行こう」

「山、ですか? そもそも何がというわけで、なのかも分かりませんが」


 いつも通り、ちょっとムスッとした表情でアリーゼは言った。


「山だ。山に行くんだ。山に登って、キノコとか山菜とか採って、山頂で美味しいご飯を食べよう」


 俺の言葉に彼女は今度はハッキリと嫌そうな表情をする。


「山なんてお洋服とか身体とかが汚れてしまいますよ、お父様」

「で、でも、意外と行ってみたら楽しいと思うんだ。ほら、山頂で食べるサンドイッチとか、絶対に美味しいと思わないか?」


 俺は必死になって説得を試みる。

 しかし案外アリーゼは簡単に折れた。


「分かりました。行きましょう、山登りに」

「おおっ! ありがとう、アリーゼ!」


 俺はそう思わず彼女に抱きつこうとしたが、アリーゼはそれをスッと慣れたように避けてしまうのだった。

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