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第7話.死のレース


「はぁはぁ……」


 残り四体のネメアをアマテラスに任せ、正門近辺からは少し離れた体育館裏の広場に来た大和。

 今日だけでもネメアと三度対峙しているが、今回ばかりは特殊個体ということもありヒリヒリと肌に伝わってくる圧倒的力の差。


『グルルルゥゥゥ』

「殺す気満々っていったところか……」


『さぁどうする』

 大和は思考する。

 アルカナを使えない時点で殺せる確率は低い。

 だとしても、アマテラスが戦闘向きの神じゃないと自ら言っていたため、恐らくあの四体を殺るまでにある程度の時間はかかる。


「開始早々絶体絶命だな……」


 やることはただ一つ。

 大和はその場で大きく息を吸う。


「……ふう。よし」


 短剣を構え、ネメアに向き合う。


「……」


 緊張が走る一戦。

 一度のミスが命取りとなる。

 今回ばかりは、前回のように奇跡的な介入はない。


「……」

『グルルルゥゥゥ』


 生きの良い獲物。

 抑えきれない食欲。

 ネメアの口からは溢れんばかりの唾液。


「……逃げろっ」


 全速力で情けない後ろ姿をさらけ出す大和。

 獲物の逃亡にネメアは雄叫びを上げ追随する。


「ですよねぇぇぇーーーー!!!!」


 大体生身の人間がこんな化け物に対峙することが間違いなんだよ。と十数分前の自らのあまりに無謀な勇姿を思い出し呆れ果てる大和。


「はぁはぁ、あの自衛隊生き延びれたのかな……いやここまで命を張ってるんだ。生き延びてもらわないと困るなッ」


 大和は全速力で走り抜け校舎内へと逃げ延びる。


「はぁはぁ……校舎内ならあいつも入ってこれないだろ」


 懐かしい校舎だが今は感傷に浸っている場合ではない。

 空き教室の机の上に腰を下ろし、大和を探し徘徊しているネメアを窓から見やり

 時間稼ぎの方法を模索する。


「短剣は身動きを止めるにしても、恐らく一度きり」


 先ほど初めて短剣に触れたことで、この短剣の性能を理解した。

 恐らくは、アマテラスのおかげだろう。

 これは神代に作られた短剣であり、コンクリート程度なら神のように切れるほどの性能を持ち合わせていながらもかつての時代ではこの程度の性能のものは当たり前に使われていたらしい。


「さてどうするか」


 本来神性を持つものには現代の武器では傷一つつけることは困難らしい。

 だからこの世界では、とある神の協力のもと自衛隊などにも神性を持つ銃や刀などが支給されている。

 だがそれでも現代の武器と神性の相性はあまり良いとは言えず、一般兵に支給されるものは、わずかながらの神性を込めた武器に限る。

 そのため、先ほどのようなネメアの一方的な蹂躙も珍しくはないようだ。


 だがしかし神代に作られたこの短剣は、ある程度の神性を帯びているため神性を持つあのネメアには効果あり。ということだ。

 神性特攻とでもいうべきか。


「うーん……だけどなぁ……」


 持ち主自体がただの人間である時点で、特殊個体に一矢報いるということはほぼ不可能。

 基礎の能力があまりにも違いすぎる。


「死を承知で足元に潜り込んだとしても……」


 ネメアに刃を突き立てる動作の最中に踏み殺されるのがオチ。


「校舎を斬り崩しやつの上に落としたとしても……」


 最悪のケースでいえば、難なく回避され食い殺されるのが目に見えている。

 仮にうまく誘導し、罠に嵌めれたとしても傷一つ無いままやつが激怒し殺されるのがオチだ。


「今ヤツは、完全に俺を格下として見ている」


 それ自体は事実だ。

 それにこちら側にはメリットしか無い。


「だがやつが本気で俺を殺しに来るとしたら」


 常人の動体視力、反射神経、運動神経では一秒と立たず殺されるのが明白だ。


「まぁ、気付かないうちに殺されるなら案外幸せなのかもな……」


 だが、約束をしてしまった。

 必ず生き延びると。


「どうすればいい。考えろ……考えろ……考えろ……」


 必死に思考する。

 打開策はないかと。

 この危機的状況をなんとか打破できないかと。


「いや、一つ……」


 かなり危険な賭けとなる。

 一回でもタイミングを間違えば死を意味する。


「でもあっちの戦況がどうなっているかにもよる」


 思案していたその時。

 耳を劈くほどの雄叫びが校舎に響きわたる。


「ぐッ」


 ビリビリと肌に……脳内に響くその轟音は、激しい怒りを意味するものと大和は即座に理解した。


「気が短すぎねぇか……」


 化け物に穏やかさを求めるのは無理があると脳内で自らにツッコミつつ、大和のやるべきことは一つに絞られた。


「これをするしかなくなったな」


 不幸中の幸いと言ってもよいのか、ロキに及ばずともあの個体は怒りとともにかなりの神性(オーラ)を放っていた。


「さっきとは比べ物にならないな……。あれは残り四体とはものが違う」


 まさに特殊個体(ユニークモンスター)と呼ぶにふさわしい相手だ。


「これで可能性が広がった」


 大和は机の上から重い腰を上げ覚悟を決める。



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