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第13話.悩んだ末の助っ人


「間宮さん気をつけて帰ってきてくださいよ」

「うん。ありがとう大和くん」


 新宿駅の前で、話す二人。

 今日はあの『終末の宴』が起こった災厄の日。

 つまり、間宮の家族が亡くなった命日でもある。


「元板橋区ってことは、最前線の……」

「あぁ、毎年のことだよ。結界が張られてるし危ないことも起きないよ」


 ニコッと微笑む間宮。

 この新宿にもアマテラスやヤマトタケル同様に神が顕界していたらしく、どうやらその神は自ら結界となりこの新宿を守護しているという。


「じゃあ、そろそろ行ってくるよ。」


 そう言って背を向ける間宮だが、なぜか即座に振り返る。


「あ、そうだ。夕方に帰ってくるしさ。帰ってきたらまた付き合ってよ」


 手をクイッとジョッキを持ち上げる仕草をする間宮に思わず吹き出す大和。

 間宮は満足げに背を向け改札を抜ける。


「分かりましたよ。だから気を付けて帰って来てくださいよ」


 この都市の中心である新宿駅からは二十三区それぞれへ出発する電車が出ている。

『魔力生成』という一般的なアルカナを使った電車が、一日に二回しか出ていない。


 最終防壁である新宿と同じく他の県に面した区の城壁は常に自衛隊や義勇兵などによって監視されているため、安全なのは確かだが、いささか不安なのも致し方ない。

 大和は後ろ髪引かれながらもその場を後にする。


『大和よ。妾達も出るのじゃ』

『あぁ、分かってる』


 先日の作戦はこうだ。

 現在最高戦力とも呼べるヤマトタケルは、新宿に残り今夜来る恐れのある魔物の集団に備える。

 口うるさいがあの神ならば、新宿という中心からなら神気を解放すればどの区にも数分でたどり着くだろう。


 そして、アマテラスと俺の二人はヘッドレスの長との接触が目的だ。

 そのため、この防衛都市新宿から離れ神奈川県の相模原方面へと向かわなければならない。

 が、些か戦力不足と見た俺は仕方なく毒を飲むことにした。


「おぉ……我が王。ようやく私を配下として……」

「長くなりそうならいい。幻惑の王。今回は力を貸してくれ」

「なるほどなるほど、承知致しました。この旅にて私の力を証明すれば配下の末端に加えてくださるという事ですね?なんという温情……」

「あー違うな。違うよ」


 幻惑の王を今回旅の戦力にと考えたのは、大和。

 正体不明で未知のアルカナを持つ大和の成長率は芳しくなく、戦力としては不十分と考えた結果の末頼ることにしたのだ。


「まぁ、何にせよこれで安心じゃな」


 アマテラスの言葉に苦笑したい大和であったが、先を急ぐ。


「ヘッドレスのリーダーは噂によると激情の王を撃退したと聞くが、幻惑の王よそれは真か?」

「さぁ、他の異王(ロスト)のことに関しては私も知識不足です。そもそも王紋を所持しておらず、プレイグの干渉により生み出された予期せぬ異分子である私達を名も無き王候補と呼んでいいのかすら怪しいですし」

異王(ロスト)か……ふむ。特異なお主達の種族名としよう」

「ほうほう、日ノ本の最高神に種族名をつけて貰えるとは光栄です」


 情報の共有を交わしながら歩いている三人。


「あ、ただ激情の王は最も活発な異王(ロスト)かもしれませんね」

「活発?」

「はい!!!」


 大和の言葉に強く反応した幻惑の王はそのまま言葉を続ける。


「まず我々異王(ロスト)は七人居ます。(わたくし)幻惑の王と激情の王……一番有名なのはプレイグに加担し、あの日世界を襲った『罪咎(ざいきゅう)の王』その他は未だあまり姿を顕にしてませんが、私たち異王(ロスト)は自らが王になるよりも自らの王を得る事で力を発揮します。それに加え罪咎の王はプレイグにより名前を与えられている」

「名前?」

「えぇ、私達は名付けをされた瞬間にさらなる力を発揮するという仕組みで構築されてる生命体。であるため、王を得るとまず初めに名を授けてもらうのです。罪咎の王は『イヴリース』恐らく現状で言えば異王(ロスト)の中でも頭一つ……いいえ二つ抜けて最強と言っても過言では無いでしょう」


 その言葉を聞いた二人は思わず目を丸くする。


「は?お前でもあれだけの力を持ってるのに……?」

「勿体なきお言葉……しかし、それほどに王を得るということは……名付けをしてもらうという事は私たちにとっての最重要事項なのです」

「そんな中なんでお前は俺を……」

「私達は生まれながらにして、過去の地球の記憶全てを把握しています。それに加え生きてきた現在までの出来事も全て把握している」


 幻惑の王は、歩きながら淡々と話を続ける。


「世界で起こる全ての出来事がつまらなかった。私からすると瑣末事でしか無かった。そんな世界に飽き飽きしていたあの日。我が王の気配を感じとりその場に赴きました」


 耳を傾けながらも周囲を警戒する大和。

 周辺に魔物の気配はない。

 恐らく幻惑の王であるこいつがプレッシャーを放っているからであろう。


「最初は暇を持て余していたから……という理由で貴方に興味を持ちました……ですが貴方はまさに特異点であった。予想だにしない行動。未知のアルカナ。諦めない勇敢さ。貴方がこれから進むであろう道を一番近くでみたい……。私は確かに得体の知れない怪しい生命体ですが……今更あなたに対しての忠誠心を曲げることは出来ません」

「そう……か」

「それに何より……人間として接してくれた貴方様の御心に惚れました」


 にこっと微笑むその姿は、もはや性別という壁を越えた何かがあり、大和は思わず目を逸らしてしまう。


「それがあの時幻惑の王としてではなく、単なる未知なる人間に対する恐怖を抱いていた……としても」

「そうか……」


 どんなに荒廃した世界でも、人間とはかけ離れた生命体であっても。

 知性がある以上……同じ言語を喋るナニカがいる以上、孤独というものは耐え難い。


 こやつは自分が何者かも分からずに『幻惑の王』として恐れられることに飽き飽きとしていたのかもしれない。


 その孤独という恐怖を溶かしてくれたのが、大和だったのだろうか。とアマテラスは二人の会話を聞きどこか納得する。


「っと、話に夢中になりすぎたな。そろそろ人目につかないし爆速でヘッドレスのアジトに向かおう」

「そうじゃな!」

「仰せのままに」


 防衛都市の城壁からも見えない距離まで来た三人は、目にも止まらぬ速さでヘッドレスのアジトへ向かう。



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