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1月10日(6)
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「……」
芽衣はさきほど彰に掴まれた手首をぼーっと見つめる。
彼の手の感触を思い出す。
自分のとは違う、ごつごつとして大きな手。
彼が男の子なんだと感じさせる手。
今まで、家族以外の男性に触れることなんてほとんどなかった。だから、ああして腕を掴まれるのだって初めての経験だ。
ちょっとからかうだけのつもりだったのに。
彼の戸惑う表情を見たかっただけだったのに。
まさか、彼があんな行動に出るなんて。
逆に自分が彼にドキドキさせられてしまった。
「……」
横目で彼の様子を窺うと、彼は再びパンを頬張っていた。何も変わった様子がない彼を見ると、自分だけが意識しているようで無性に悔しくなる。
そう、気にする方が負けなのだ。
芽衣は、今朝早くに起きて準備した自作のお弁当にパクつく。
しかし、その味はよくわからなかった。