2月15日(12)
「アハハッ、もうこれまでのようだねぇっ」
俺を屍鬼にするためか、ゼックスはすでに【虚無】の魔導を解除していた。洋剣を高く挙げる。
絶体絶命の危機に顔が引きつる。
だが、ゼックスが洋剣を振り下ろす直前で、ドスッという鈍い音が響いた。
「……ん?」
腹部に違和感を覚えたのか彼は静かに目線を下ろす。すると、彼の腹部から銀色の刃がぬっと生えていた。
「芽衣っっ」
ゼックスの後ろに芽衣の姿があった。
彼女は俺が落とした小太刀を拾い、ゼックスの背中からそれを突き立てていた。
「ありゃ、こっちに夢中になりすぎて、紅家のお嬢さんを忘れていたよ。でも、ただの刀では僕を倒せないよ?」
俺が手放したことですでに【虚無】の魔導は解除されている。今突き刺しているのは、【虚無】がかかっていない、ただの小太刀だ。そんなの不老不死の吸血鬼にとって痛くもかゆくもないだろう。
ゼックスは彼女がついにやけを起こしたのかと、ほくそ笑んでいた。
しかし、芽衣は真剣な声で叫ぶ。
「彰っっ」
特に何をしろと言葉にされたわけではない。ただ名前を呼ばれただけ。
でも、彼女の言わんとすることが理解できた。
「【接続】――――」
最初の詞を口にする。同時に、ゼックスの腹から飛び出した刃体を両手で握りしめた。
握りしめた部分から赤い血がポタポタと地面に落ちていく。
「ん、まさかっっ」
ゼックスの顔が引きつる。彼は俺たち思惑に気がついたのか、刃体を掴んで、俺の両手を放させようとした。
決してこの手を放すまいと、俺はさらに握る手に力を込める。
先ほどよりも多くの血が手のひらから流れ落ちる。
そして――、
「《異なる者よ、我が世界から消え失せよ》――――」
詠唱が完成する。
漆黒の粒子が刃先を伝い、ゼックスの体内に流れ込んでいく。
「くそっ」
彼の顔に焦りの表情が浮かぶが、もう遅い。
【虚無】が侵入し、体中を侵食していく。
体の表面に罅が入っていき、患部を中心に崩れていく。
「やめろっ、やめろっ」
叫び、崩れ去っていく吸血鬼の姿を目にしながら、俺はさらに魔力を送り込む。
さらに瓦解する速度が増していく。
そして最後には――――、
「くそっ、くそっ、くそおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
静まり返る夜のビル内で彼の慟哭が響き渡った。
誠に勝手ながら、12月31日~1月3日は投稿を中断いたします。
読者の皆様、良い年越しをお迎えくださいm(_ _)m




