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2月15日(3)

***


「ねえ、犯人がもう一人いるってどういうことっ⁈」

 後ろから俺を追っていた芽衣が叫ぶ。

 俺たちはビル伝いに飛び跳ねながらある場所を目指していた。

 まだ日は完全に落ち切っておらず、夜のとばりと夕暮れの赤色光とがせめぎ合う時間帯。こんな時間にビルを忍者のように跳び回っていたら誰かに見られてしまう可能性がある。あまり世間で目立ちたくない魔導師ならあり得ない行動だ。

 しかし、今はそんなことに気を配っている余裕はなかった。


「芽衣、第一の事件と第二、第三の事件との相違点は分かるかっ?」

 猛烈なスピードで移動しているため、風の勢いが強い。

 風で声がかき消されないよう、芽衣と同様、大きな声で叫ぶ。

「えー、相違点? それは第一の事件は心臓が複数見つかって、他は心臓が一つずつしか見つからなかったことお?」

「ああ。おそらく第一の事件で犯人は一度複数体の素材を集めて、それから一気に屍鬼しきの生成をしていたんだ。それに対し、第二、第三の事件で犯人は人を殺した瞬間、心臓を抉って屍鬼を生成している。つまり、犯行手口が全く違うんだっ。実際、武も殺した現場で心臓を抉ったって言っていた」

 そう、これが芽衣の家で感じた違和感の正体。

 第一の事件は芽衣と一緒に調査をしたわけでなかったし、この事件は単独犯だと思っていたから、武の言葉を耳にした時点では何らの疑問も抱かなかった。

 スピードは全く落とさないまま言葉を続ける。

「それに、こう考える理由がもう一つある。それは犯人だと思っていた怪異も屍鬼だったてことだ」

「えっ、どういうこと?」

 意味が分からなかったのか、後方から芽衣の疑問の声が上がる。


「屍鬼は怪異が生成するって言っていた。それなら、武を生成した怪異がいるはずだっ」


「あっ⁈」


 そこで芽衣も納得がいったらしい。

「俺の推測はこうだ。まず、第一の事件の犯人である怪異が事件を引き起こす。おそらく、この第一の事件で生成された複数の屍鬼の中に武がいたんだ。そして、武はその怪異のもとから脱走。己の意思で第二、第三の事件を引き起こした」

「えっ、じゃあ、第一の事件の犯人はまだ生きているってこと?」

「ああ、そういうことだ」

「それなら早くそいつを見つけ出さないとっ」


 芽衣の言う通り、一刻も早くそいつを見つけ出さないといけない。急がなければ、また新たな被害者が出てしまう。

 それでは、そいつは一体どこにいるのか?

 それについてはもう目星がついている。

 父さんたちは怪異の討伐に向かった。七海が下校中に怪異の気配を感じ取ったからだ。

 しかし、基本的に怪異は日没後に現世に生まれ落ちる。日中に生まれ落ちることなんてほとんどない。

 そこで一つの仮説が生まれる。

 もしかして、七海が発見した怪異はもともと現世にいたやつなんじゃないかと。

 そうだとすれば、そいつが第一の事件を引き起こした怪異の可能性が高い。


「そいつの場所は分かるのっ?」

 後方から芽衣の叫び声が聞こえる。

 俺は大きく頷いて叫んだ。


「ああ、おそらくこの先の廃ビルだっ」


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