2月14日(2)
区切りの都合でとても短いです。
決してサボりではありません(たぶん……)
「……」
「……」
お互い無言で華やかに輝く並木道を進んでいく。
無言、と言ったが、お互いの間に気まずい雰囲気があるわけではない。
両者の間に温かい空気が流れ、自然と心が落ち着く。
素の自分でいられるとは、こういうことを言うのだろうか。
こうやってきれいな風景の中を彼女と二人で歩いていると、ふとこれまでのことを思いだした。
初めて彼女を見たとき、俺は素直に可愛い人だと思った。
でも、彼女は、転校初日の昼休みに突然、俺のお気に入りの場所にやってきて、俺と一緒にご飯を食べろと言ってきた。
このとき、俺は彼女のことを変な奴でめんどくさい奴だと思った。
しかも、彼女は事あるごとに俺にちょっかいをかけてきた。
さらに彼女を疎ましく思った。
それから、彼女が魔導師であることを知った。
例の事件の調査に無理やり巻き込まれた。
やっぱり彼女に関わるとろくなことがないと心底感じた。
でも、事件の調査に関わるうちに彼女に対する印象は少しずつ変わっていた。
ドライヤーをかけているときの彼女は少し甘えたがりだった。
料理を作っているときの彼女になんだか安心感を覚えた。
そして、魔導を使っているときの彼女はとても活き活きとしていた。
学園では見ることのできない、いろいろな彼女の一面を知ることが出来た。
なにより、家族から見限られ、クラスメイトとも距離を置く俺にとって、彼女との時間は唯一、心の休まる時間だった。
彼女の家が自分の家のように感じられ、彼女と過ごす時間がとても楽しかった。
この頃から、俺は少しずつ彼女に心が惹かれていたのかもしれない。
でも、彼女を明確に好きだと感じたのはあの病院での出来事だろう。
彼女は俺を肯定してくれた。
彼女は俺に頑張ったねと言ってくれた。
彼女の言葉が俺を救ってくれた。
それから俺は彼女を守りたいと思って、彼女と恋人になった。
そして、今はこうして彼女の一番近いところにいる。
うん、すごく幸せだな……
「……」
「……」
相変わらず、お互いに言葉はない。
道ではたくさんの人が行き交い、多くの話し声が聞こえてくるのに、俺たちの周囲だけは、二人だけの空間が広がっているように感じた。