1月26日(1)
今朝、一階のリビングに行くと、七海はおらず、母さんと父さんがいた。何やら二人で話し合っていたようだが、俺が姿を現した途端、室内は無言になった。
母さんは気まずそうに目をそらし、父さんは咳払いをして新聞を読み始める。
いつものあの重たい雰囲気が室内を支配する。
やはり、この空気は苦手だ。今朝は七海がいない分、さらに憂鬱な気分にさせてくる。
「……」
トーストをもらうべく、キッチンに向かって歩く。
だが、食卓を横切ろうとしたとき、父さんが珍しく口を開いた。
「なあ、彰」
「何ですか?」
父さんの言葉に足を止める。
「昨日はどこに行っていたんだ。珍しく遅かったじゃないか」
父さんは見ていた新聞から視線を上げることなく尋ねてきた。
「友達の家です」
俺も父さんとは目を合わそうとしない。
「……ふん、役立たずのお前にも友達ができたか」
役立たず――――
これはあのときから父さんに言われている言葉だ。
だが、ここで何か言い返しても全く意味はない。
ぐっと拳を握りしめる。
「言いたいことはそれだけですか?」
自然と棘のある口調になってしまった。
父さんは相変わらず新聞から目を離そうとしない。
「今日の夜は家族で外食するつもりだ。昨日、七海がテストで満点を取ったからな」
「……、分かりました」
父さんの言う「家族」に自分は含まれていない。
「つまり、今日の晩ご飯は自分でどうにかしろ、てことですね」
「ああ、そうだ」
「用件は以上ですか?」
「もうない。さっさと学校に行け」
「……」
父さんから解放され、いつものように母さんからトーストを受け取る。
「それじゃ、行ってきます」
「……」
今日も返事は帰ってこなかった。




