1月25日(1)
「おはよう、彰」
今朝もいつものように、琢磨たちが俺の席にやってきた。
「ああ、おはよう」
俺が挨拶を返すと、琢磨は俺の席に両手をつき、顔を近づけてきた。
「ん、どうした、急に?」
突然、顔を近づけられ、戸惑いを覚える。
琢磨はひと呼吸おいて、
「なあ、彰って昨日の夕方、隣町の公園で紅さんと一緒にいたか?」
鬼気迫る表情でそう尋ねてきた。
「えっ?」
思わず素っ頓狂な声を上げる。
「いやな、俺の友達が昨日、彰たちを公園で見かけたって言うんだよ」
「え、まじで?」
なるほど、どうやら、昨日、二人でタピオカジュースを飲んでいたところを誰かに見られたらしい。
ただ、その経緯を説明するのは難しい。
怪異の調査と本当のことを言うわけにもいかないし、魔導師以外に怪異は馴染みがないから言ったとしても信じてくれなさそう。かといって、経緯をぼかせば、年頃の男女だ、変な邪推がされるに違いない。
こっちは強引に付き合わされているのに、この上、クラスの誤解を生み、晒し者になるのはまっぴらごめんだ。
「悪いけど、昨日はずっと家にいたぞ。たぶん人違いだな」
というわけで、しれっと嘘をつくことにした。
「えっ、そうなん?」
「ああ、昨日は新作ゲームの発売日だったしな」
「あー、それ、彰も買ったんか。俺も昨日、買って、プレイしたわ」
「おーい、おまえらー」
そのとき、琢磨たちの友人らが登校してきた。
琢磨たちはじゃあな、と言って、俺の席を後にする。
そのため、この話題は自然に打ち切りとなったのだった。