銀、銀、銀
壁一面にずらりと並ぶ、銀色の食器。
何千、何万もの食器を集めるのに、どれだけの時間と手間と、お金がかかったのだろう。
考えるだけで、めまいがしてくる。
休日。
私は友人の家を訪ねていた。
趣味で小説を書いているのだが、ネタが尽きた。
だから、友人に小説家のネタになるものはないかといったら「いいものを見せてあげよう」となったのだ。
それで、家を尋ねた次第である。
友人に案内されたのは、コレクター品を保管するためのだだっ広い部屋。
何十人もの人間が集まっても窮屈しないくらい。
それを人間が使わずに、食器が占領しているだなんて、ある意味とても贅沢だった。
「ネタを提供できたかな?」
「ネタになるというより、題材になるという風に近いわね。というか自慢したかっただけじゃないの?」
「ばれたか」
それからは、コレクター品についてあれこれ話をした。
彼はずっと、わたしに背を向けて語り続ける。
どんな歴史があるとか、誰が作ったとか。
食器一つ一つに物語があって面白かった。
最初はただ自慢したかっただけかと思ったが、無事にネタになりそうでなによりだ。
一通り話を聞いた後、私は気になっていたことを訪ねた。
いろいろな模様や色のものも、世の中にはあるはずなのに。
ここにあるものは、すべて銀色。
「どうして銀色のものばかり集めるの?」
「ああ、それはね」
彼はこたえる。
「銀って鏡のようになるだろう? 僕は、一生懸命集めた収集品を人に話すのが好きだからね」
「?」
「話しているときはいつでも、驚いたり感心したりする、お客さんの反応する顔が見たいんだよ」
趣味が悪い。
赤面した私は、食器の銀色にうつった彼の顔をにらみつけた。