纏め、指揮する相応しい人物
───── 残りは四曲となった 。
この内から更に二択に絞っては投票を執り行う彼女の姿を横目で見遣る。 巫山戯ることもあれば、こうして時にはリーダーシップも発揮出来るという部分も彼女が人気になり得た理由の一つだろう。
この様にクラスを纏めあげられるのなら、彼女が委員長になっても良いのでは無いのかと心の底から思う。
然し、声には出さない。出せない。大人しく聞き耳を立てて彼女の言葉を聞き続ける。
四択が二択へと変わればついに 最後に決める番だ。
正直な話をするのなら、どちらでも構わない。
俺は歌う訳では無く口パクでやり過ごそうとしているからだ。
口パクをする事に大してなんの抵抗も無く、これに関して言えばやる気は満々。何も考えていなさそうな瞳を浮かべつつ、特に何も意識せずして 隣の教室との境になってる 一番後ろの 壁を見詰め。
自身同様にして 彼女が一番向いてるだの、彼女がやれば良いだのが消えて来て仕方が無い。
まあ、そんな事は気にしないのだが。
等々 、彼女が取り仕切る事で最後の投票になった。
漸く終われるという安堵から溜息が零れ落ち、然して ... 完全に油断していた。隣からの視線が気になり、ふと 其の視線を横と映せば 瞳には彼女が笑みを浮かべる姿があった。
「 感謝しなよ 〜 ?この私がやってあげたんだからね。ふふ 、なんて 。」
と、完全に調子に乗ってるお調子者の発言だ。その 彼女を哀れみの視線で見つめようかと思ったがやめておく。なぜなら絶対に面倒な事になると直感的に理解しているからである。
特に表情に変化をもたらす訳では無くあくまで平常。普通の顔を浮かべつつ、そっと一息を吐いた。
そして、 軽く会釈をして礼を。調子に乗り感謝の気持ちが薄れたとはいえど 感謝の気持ちが無い訳では無い。 だからこそ礼儀は弁え、感謝する。
「 ありがとう、助かった。」
その言葉を彼女に送る。
... するとその彼女は嬉しそうに微笑んだ 、満面の笑みで笑い 楽しそうな表情すら浮かべている。
その様子を暫し眺め終われば、視線を逸らしてまた正面の壁を見始める。
幾ら二択に絞られたとは言えどまだ 最後がある。それも当然彼女が取り仕切る。
その様子を只只受け流すように聞き続けていれば 最後の投票の呆気なく終わり、曲は決められた。
何の意図を持ち、この曲が 一番になったのか。それは分からない、単純に好きな者が多かっただけの話かもしれない。
選ばれた曲は ... 、そう。
「 え〜っと ... 選ばれたのは 『 旅立ちの日に』です!決まったからには全力で頑張ろ 〜 !」
気合いの一言を放つ。
彼女が纏めればクラスも一つになり、一致団結した様に声を揃えて言った。
『 お 〜 !』
その声が響き渡るのを聞きながら投票は終了する。
合唱文化祭があるのはまだ一ヶ月以上先の話になる、 これからは 練習を繰り返し行い続けるのみだ ...