不器用な頼み方
黒板には、様々な種類の歌が書き込まれていった。
不幸に不幸が重なった ... と言っても過言では無い。このクラスは学年一に煩くて喧しいのだ。
苛苛とした表情を浮かべながら、溜息をまた吐き捨ててしまう。それも、隣の不可思議な少女に聞こえるだけの声量で。
それを聞いた彼女は、不気味とすら思える笑みを浮かべながら此方を見てくる。その視線を捉えれば、ふい ... と視線を横に逸らす。見るな、と言わんばかり。
黒板の隅から隅まで、ぎっしりと選ばなければいけない曲名で埋まっていて、これを 一つに絞らないといけないと考えるだけで疲れがどっと押し寄せる ... 。
全てを丸投げしたい気持ちを押し殺しながら、目の前で 友と話したりして いる生徒に号令をかける。
「 うるさいので黙って下さい。」
と、一言だけ。
当然人気者でも無い自分がそんな事を言って黙るような生徒達では無く、誰も黙らない。 教師は意味深な笑顔を此方に浮かべるのみ 。
はァ、どうしたら良いのだろう ... 。
その様に考えながら悩んでいると隣で声が聞こえる。
「 ねえねえ、助けてあげよっか ?助けて、って言ってみてよ。言いなよ言いなよ〜。」
と調子の良い彼女は、嘲笑うように言葉を述べてくる。正直な話を、気持ちを言えば苛苛は更に募るばかり。
だが此処は大人しく彼女を頼るとしよう ─────
「 ... じゃあ、頼む。けど、その言い方苛苛するから辞めた方が良いかと。」
その言葉を彼女に送り、僅かな仕返しをしてみる。
だがそんな言葉も彼女には無意味だったらしい ...
自分の言葉を聞いても尚、彼女は笑顔を浮かべてその笑顔は貼り付けた様な笑みでは無く ... 心の底から出るような 自然な笑み 。
その笑みを見た後、直ぐに興味無さそうに視線を逸らすと彼女は口を開ける。そして、少し大きめの声で彼女は 生徒に言葉を放った ─────── 。
「 はいは〜い 、うるさいから黙ってね〜 。曲決めるから 、じゃあ ... ここの中から二つ選んで !決まったら投票するからね〜 ! 」
極々自然な口調で、言い方で、彼女はそう言った。
すると 皆は、その彼女の言葉通り口を閉ざして 考え出した 。考え始める事数分後、どうやら決まったらしく ... 彼女はすんなりと 投票を仕切り始めた。
曲はみるみる内に減り、残りは 四曲のみとなった。