「異世界グランダリア生活記(4.5)~夢の‥来事~」
【その時】のことは今でも“夢”だったのかなと思う。
私が移り住んだ……いや、生まれ変わった……いやいや、転生した?
見慣れない森の中で目を覚ましてから見慣れない部屋の中で目を覚ました時――その時については今でこそ“現実”なのだということは解る。さきほど、久しぶりに会った時も変わらず悪態を吐かれたので実感がすごい。
その時はともかくとして……そう、【その時】。それはつまり私が森の中に次いで部屋の中で意識を失った後のことである。
きっとそれは夢だったのだろう。【その時】に観た光景は私の脳が創り出した幻想だったのだと思う。
真っ白な空間だった。きっと夢の中である私は真っ白な空間に座っていた。
目を覚ました……それは違う。だって夢の中だったのだから、私はきっと眠っていたのであろう。だが、夢の中で私は目を覚ましていた。
そして見る。真っ白な空間、私の他には何もないように思えた空間で……【その人】を見ていた。
【その人】とは言ったが、それがどのような姿だったのかは解らない。「おいおい、見ていたのだろう?」と不思議に思うだろう……私が一番不思議に思っている。
後にあるように……私が彼女の下着姿をまるで思い出せないように……何らかの細工を施されたのかもしれない。いや、だからそもそも夢なのだから曖昧なのだろう。
だから【その人】が振り返って私のことを「じっ」と見ていたとして、その表情は解らない。解らないのだが微笑んでいた……何を言っているのか自分でも解らないが、【その人】は微笑んで私を見ていた。表情は解らない。
そして、【彼女】は言った。
『あら、ごめんなさい。起こしてしまったわね……いいのよ、まだ寝ていて?』
表情が解らない微笑む【彼女】は優しく私にそう言った。声色も不明だ。そもそも声がしていたのかも解らない。
私はきっと夢の中で呆然としていたのであろう。目の前にある人が何者なのか? 森の中とも部屋のとも異なる、異世界……異次元な白い空間を眺めまわしていた。
呆然とする私などかまわず【彼女】は言う。その内容は解らない。
『でも、そうね……起きてしまうのかもね。だからあなたは終わって、始まって……そうなると不便でしょう? いいわ、だから少しだけお助けしてあげるから……代わりにいいわよね?』
真っ白な空間で私は立ち上がった。他の全て――真っ白な空間そのものから【彼女】までがきっと夢なのだろうが、私が立ち上がったことは現実のように感じられた。
私の行動、思考、存在……それらは全て間違いないものだと、響く鼓動が教えてくれていた。
性別も不明な【彼女】は不明な姿で不明な表情で……微笑みを浮かべながら私に近づき、そしてこの額に指を近づけた。
呼吸もあるのか不明な彼女の息吹を感じる。
『あなたは特異なる混入ブツかしら、それとも意図された贈りモノかしら? いずれにせよ、彼みたいにさせてもらうわ。さぁ…………目覚めなさい、そして続きを生きなさい。私が許しましょう、あなたの存在を――――世界はあなたを許可します』
真っ白だった空間。そこに存在していたのかも不明な【彼女】。
【彼女】の存在しない指先が私の額に触れた時。
真っ白だった意識が途絶える。きっと、それはまた私が気を失ったのだろう。
……いや、違うか。おそらく、私は目を覚ましたに違いない。
身体を起こした私はだから、やっぱり。
ただ呆然としていて――――――。
つづく