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「World Of GranDariya」  作者: アマタキ
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「どうしてこの世界を創ったのか?」

 ――ある日、こことはまた別の世界で1人のそんざいが覚悟を決めた。それは勇気ある決断だったと思うし、苦渋くじゅうの思いによってもたらされた自殺に似た絶望でもあった。


 死ねたらいっそきよ々しいものだっただろうか。だが、それすらできない。何せ男は重い責任を感じていたからだ。


 責任など勝手なものである。特にそれが他者への配慮はいりょであるならば社会にり込まれた概念のくさりに過ぎない。その材質は誰もがいつでも思い込むことができる。ならば紙の呪縛と思い、断ち切ることもできるはずだ。しかし、男にはそれが解っていてもできなかった。


 魂の片割れというか、家族のような存在とするか……そう、ならば例えて姉弟きょうだいとしよう。そうした存在に付随ふずいした責任というものは思わずとすればはがねのそれとなる。いつでも思い込めるということがすなわち、容易たやすいという意味にはならない例だろう。


 その男を人とするなら「弟」だ。その弟がつまり、ある日に覚悟を決めたということである。


 それは何の覚悟か?


 内容そのものは単純なものである。つまりは「引っ越し」だ。住みれた世界りょういきからの引っ越し……ただそれだけではあるのだが、ただそれだけにとてつもない覚悟が必要であった。


 我々にも一応は社会のようなものがあったと考えてほしい。それを「あの世界」としよう。そこに“ある姉弟”が住んでいた。


 先ほどから発言にある男はこれの弟である。わりかし真面目で付き合いも悪くなかったと思う。だからこれだけなら問題はさほど無かったので、そのままあの世界に住んでいても良かったのだろう。


 問題は片割れにあった。あの――つまりはそんざい、「姉」である。


 姉弟の内の姉は真面目は真面目だが、この世で最も恐ろしい真面目だった。誠実で冗談じょうだんの欠片もなく、ただ一点に集中。そう、ある事柄について究極とも言える真面目さなのであり、それ以外の全てをないがしろに、へだて、うたがい、そして攻撃した。


 姉の存在理由としてきっと「愛」があるのだと思う。その愛はただ1つ、弟に向けられた。全ては弟のため……というよりは弟に対する自分の愛のため、そのためだけに真面目となって存在している。



つね々思うことがある。愛とは何か?|



 人を愛するということはその人を大切にしたり護ったりすることなのだろうか。それとも、その人を大切にしたり護ったりすることで自分を満足させることなのであろうか。


 前者であればその想いが片道であったとしても尽くすことも愛であろうか。相互通行であっても、自身を破滅させてまで通すことも愛であろうか。


 その姉がどのようなたぐいであるのかといえば……片道か相互かなど関係なく、おのが想いのまま、欲望のままに弟を理解しつくしたい。そのためには他の破滅はめつなどまるで問題にならない、というものであろう。というか弟以外の何もかもが彼女の眼中に無い。


 そんな有様だった。そんな有様なのに、姉弟はあの世界でもわずかしか存在しない、極めて影響力が高い格位しんかくだった。しかも姉の特異さは弟を凌駕りょうがするものであるため、とても気を使わないといけなかった。


 姉は常に弟を求めた。弟はそれに応じながらも世界への影響を懸念けねんした。姉に気を使いながら、世界……ここでいうなれば社会、人付き合いと言うべきであろうか? ともかくにも、それらに配慮はいりょする日々が続いたのである。


 何せ恐ろしい。自分が求めたいと思った時に、意図的でなくとも彼女と弟の時間をけずる存在は容赦ようしゃなく攻撃の対象となった。近い格位のものならば概念の転化まではいかないだろうが、最悪の場合に変化は有り得る。というか世界の秩序が何ヶ所か反転してしまったりしたが、そのままにして実質夜逃げしたことは謝罪しようもないことであろう。


 終わりない存在ですらそうなのだから、それ以下の格位の方々には大変なご迷惑をおかけした。どれくらいの存在が変化・抹消まっしょう、あるいは死にいたったのか……今では知る術もない。


 そして、誠に心苦しいことに。その弟は存在の傾向から、どうしても他の存在各位と接することが多かった。オールマイティに全方位で強烈な姉と違って、不運なことに弟は不器用だったのだ。


 そうしたことから被害は日々発生し、あの世界はひどく混乱する状態が当たり前になってしまっていた。むしろごく一部以外は原因も解らず「そういうものだ」と混沌としたり方に疑問も抱かなかっただろう。今ではどうなのだろうか。


 それで、話を始めに戻して……その男、つまりは姉弟の弟の方は覚悟したのである。


『我々が存在する限りこの世界は混沌こんとんであり続ける……ならば、消えるしかない』


 つまりは「引っ越し」である。消えるといっても死んだりできないものだから、もうどっかに移動するしかなかった。あの世界に影響が及ばないほど、遠い場所に……。


 その日は特に荒れていたと思う。時間軸は滅茶苦茶になるし、生命そんざいの何種類かは混ざったり絶滅した。まぁ、そういうものだと多くの方々は思っているので実際混乱という混乱はないのだが……そのことがむしろ心苦しかった。


 今にして思えばその弟は「あの世界が混乱している」と考えることがちょっと異常だったのかもしれない。それこそ特異的であろう。思うことすら異常なのだと思う。


 ともかく、弟は覚悟を決めた。意を決して姉に「この世界を去ろう」と伝えた。理由はそんなに他が邪魔なら我々だけの世界を創ればいいじゃないか、という具合だった。ここで言う「他」というのはだいたい同格の方々を指していた。


 弟は正直、姉が断ることはないと思っていた。考えてみれば彼女にとって理想的な提案であろうから。ただ単に、弟にとってはとてもつらい未来があるというだけである。それでも考えとしては甘かったが……。


 意外だったことは姉の変化である。あれほど好き勝手に混乱を起こしていた姉が、弟の提案を受けてからピタッと横暴を止めたのである。


(実はショックを受けたのかな……自分がとんでもない存在だと、やっと気がついたのかな?)


 弟はそんなことをのんきに思っていた。


 姉はおしとやかというべきか……それまでを考えると怖いくらい静かになった。干渉かんしょうも維持の一手となり、他の方々からも「どうしたの、まるで影響こないけど?」などと心配と同時に安心されたくらいである。


 何かは解らないが、聞いても「うれしい」とつぶやくだけなのでこれは変化――いや“改心”と例えよう。


 そう、改心してくれたのだと弟は喜んだものだ。こうなると弟も姉のことを愛おしいと……そこに相互の想いが宿やどった気がした。その“想い”なる概念がいねんの集合こそが“愛”なのではないか――と。その時、そのように弟は感じたものである。つまり、要はバランスなのだろう。


 そうして愛おしくも若干不気味な姉に付きまとわれながら、引っ越しの準備は着々と進んだ。


 移住先の世界候補を探したり、その後戻れないように移住方法を考えたり……あまり時間はかからなかったと記憶している。


 そうして姉弟はいよいよ引っ越しの時を迎えた。その頃にはすっかり他の方々も姉に脅威きょういを覚えておらず……というか何も境界の影響が無いので恐れる必要も感じなくなっていたのであろう。ともかくとして、彼らは我々を送ってくれた。


 移送のあなは開かれ、迷惑ものの姉弟は旅立った。人にすれば笑顔で涙を浮かべて手を振る弟と、その横顔を真顔で見つめ続ける姉が抱き合ったまま跳び立って消えた光景であろうか。


 姉弟が去った後。今でこそあの世界がどうなっているのか……それは解らない。興味きょうみは無いことはないが、知るには障壁しょうへきが少し厚すぎる。だが、間接的にでも情報は得られている。ちゃんと昔よりは混沌としてないよ、とそういったご意見を多々頂いた。


 それは良いのだが……一方のこちらはまるで良くなかったと言わざるを得ない。


 結果だけ言えば「この世界」に着いた途端に姉は変貌へんぼう――もとい、元通りに本性をあらわとして唯一邪魔が可能な弟との一騎打ちを力でねじ伏せ、ひどく混沌としてかついびつな世界をここに創り出してしまった。


 だから、そのことは申し訳ない。今のこの世界に歪だとか不条理だとか……そういったことがあるのは完全にこの姉弟の責任である。一応、整えるようには言ってあるのだがさすがに細かな問題バグは残ってしまう。あれら程度では限界がある、仕方がない。


 だが、最低限はあらがったつもりだ。その甲斐かいあってか、こう……なんか生命などというものがあるべき環境の土台はこの世界グランダリアに出来上がっているのではないかと思う。あとはどのような世界に進むかはもう、人々で頑張ってもらいたい。


 無責任なことを言うけど……あの弟に怒る気持ちはよく解るし、それは怒ってくれて構わない。ただ、どうかこれも解ってほしい。


 あの弟だって今現在も頑張っている。なんとかあの姉を――彼女を、「変化」という形で救うことができればと……そう、願ってはいる。できるかはともかく、だ。



|常々思っていることがある。愛とは何であろうか?|



 その明確な答えなど無いのかもしれないし、そもそも概念干渉などしてはいけないのであろう。


 だが、ならば……どうかみせてほしい。



 愛とは、誰かを大切にすることとは――――あの時??



 そう、あの時だ。姉が本性をきだす寸前すんぜん。すっかり落ち込んでしおらしくなったと思っていた彼女に向けてあの弟は言った。


『何があってもあなたを護ります。そのためになんでもするから、だから……』


 発言の直後に人でいえばそう、“口づけ”であろう。そのような熱量を発生させてから以後、存在の境界線をこすりつける様におかされ続けることになった弟。


 弟を人とすれば、ようは怪物のような感情を流し込まれながら何度も壊されて、変化を強要されて――それでも抗って。


 そうして残った残滓ざんしが今の私である。今の私はどうにかこのような閉所に逃げ込んだちっぽけな化け物に過ぎない。


 ただ、種はいたつもりだ。そしてそれはきっと芽吹めぶくものだと……生命とはそういうものだと切望せっていしたつもりだ。そして、実際そのようになっている。だからどうか、それにならってほしい。


 人々に心があるのならば……いや、あるはずだ。愛は心が無ければ生じない概念だと私は思っている。逆に、愛があるのならば心があるはず……ならば、きっと姉にも“心”があるということになる。例えそれが怪物的なものであったとしても……。


 心があるならば、他の心を知ることで何か変化することもあるだろう。ここでいう他とはつまり、「この世界の生命」のことである。特にひとびとよ。


 最も、それは彼女が想いを抱いており、尚且なおかつそれが愛である仮定の話だが――姉弟だからこそ信じたい。それに近い概念だからこそ、信じるしかない。


 だからどうか……怪物的な愛でどうか彼女を「変化」させてほしい。無責任ながら、地の底の個室からそのように願わせてもらうよ。可能な限り、この願いを届けてもらえれば尚、幸いです。




【マグダから繋がる者へ、質問の解答/Tier0】―END




 ・・・・・ああ、そうだ。「どうしてこの世界を創ったのか?」という問いでしたね。


 答えは先にあるいきさつの通りです。「創ったのではなく、出来てしまった」これが実情です。


 無責任かつ無計画な返答で申し訳ありません。でも、だからこそ。この世界は彼女にも私にも把握はあくしきれないものがあるのでしょうね……。




 それでは……オレらはモンスター!!





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