今日は天気が良いせいで鬱屈さが強調されて物事をよく考えてしまうのでそれが理由となって思い出しながら天気が見えないことを恨む
――あの子達は1つ1つが異なっている。それは人間1つ1つが異なるようなものだ。言ってみればそうした違いの始まりや切っ掛け、原因であるのだろう。つまり、そこから逆算することで今なら彼らのことを人間的に評価することもできるのではないか? と考えついた。
今日はそうした彼らのことを思い出してみようと思う。
<タオロン(あなたは間違っている)>
最も「似ているなぁ」と感じるのはやはり、第一子のタオロンである。これは全ての暗さを請け負う覚悟を持つ者であり、光すら飲み込む漆黒の臭そうな体色が特徴的だ。使い心地としてはあんまり好きではないが、圧倒的に頑丈だったのでそれは好きだった。
しかし使いすぎて色々と理解されてしまっていたらしい。騙された。いや、それは当然こいつだけで思いつくものでもないし、そもそもこいつは知らなかった可能性も高い。……なぁ、そうだろう?
まぁ、いずれにしてもこいつによって私がこのような現状にあることは間違いないのでもういい。憶えていろよ、許さんからな。
<ダリア(私の言うとおりにして)>
最も「愛おしいなぁ」と感じるのはやはり、このすべすべな愛娘に他ならない。残念なのは若干耐久性が低いことだが、その分激しさは長男以外の他を圧倒している。また、自分を抑えきれないというかこっちが飽きてもひっついてくるような鬱陶しさがあることは残念なポイント。自身の身体が崩壊しながらも求めてくる様子には辟易とした感情も否めない。
それも含めて可愛らしいと感じられる私はいいが……他の全てにとってはこいつが一番嫌な存在ではなかろうか。
人間を長く眺めているとそれが確信になっていく。思い返せば他のやつらもこいつにだけは少し遠慮していたような気がするし……。きっと下手に刺激したくないという一種の恐怖があったのだろう。そしてこいつが時折みせる発作のような反逆性や無秩序さは本当に危うい。結果として私にいまある状況の理由となったに違いない。
この子は今もこちらを見続けているが……それはともかくとして躾はしなければいけないし、そうしたいと思う。早く来てほしいものだ。
<ガダラン(じゃぁ、おまえがやれよ)>
思えばこいつ、いつも私を避けていたな。というか隠れていただろ。そうした小心で小狡いこいつは一番嫌いだ。いや、一番ではないか……二番目に嫌いだ。
首謀者でもなく実行者でもなく、常に達観したまるで自分が特別であるかのような立ち位置を好む卑怯者。それは今でも続けているし、こいつの性根から生命が腐ったものがあるのだろう。
まぁ、でも……私がそう感じるということはそれだけ私に対して効果的なのかもしれない。常に半分眠ったような生き方にはこいつ特有の用心深さと保身の精神がよく表れている。使っていても他のやつらを盾にしてまでよく逃げてやがった。
木々を愛し、自然を愛し、人を愛し……と、よくぞ嘘を塗り固めたものだ。本当にこいつが愛しているのは自分自身、ただそれだけであろう。そういうところだけは嫌いじゃない。でも、今もって一番私を邪魔しているのだからそこは最低である。
<ヴリンベル(・・・・・。)>
こう言うのもなんだが……最も「どうでもよい」と思ってしまうのは何故なのだろう。きっといつも自分から動かず、誰かの後ろにくっついていてふるまう様がつまらなく感じてしまうのかもしれない。
この子はたぶん、他の子らに限らず、人の言うことにすら逆らわない気がする。実際、まるで逆らうことなく使うことができたが、抵抗のなさは快楽のなさに直結するものだ。物足りない。
何を考えているのであろう。自分のやりたいようにせずに、人の言動に流されるだけのこいつは何のために存在しているのであろうか。そもそも「個」としてあるからにはその流されることこそが……例えばダリアの発狂性に匹敵するこいつの価値というものなのであろうよ。
しかし、例えばタオロンのように他者を理由として行動するにしても、あいつは自分から考えて行動している。だとすればこいつはそうして流されることに意図をもっているのであろうか。タオロンに次ぐ規模でありながら、どうしてだれからも言われるままにしているのか。逆らっても別に簡単に負けやしないだろうに……そんなんだから人間になってまでダリアにいいように使われるのだよ。
<クダラ(いい話があるんだ……だと?)>
――こいつがそもそも悪い。結局、諸々のことを考えたのはこいつなんだ。唯一翼を持たない可哀想な存在だと私も下手に配慮していたのは間違いだった。正直、他と同列に見ていなかったのだが……それ故に自由を与えてしまったのであろう。全部観察していやがった。
タオロンに「反抗」という概念を与えたのは間違いなくこいつであるし、他にもおよそ知性と言える生命どもの概念を生み出したのもこいつだ。そして他のやつらを、ガダラン以外を騙して操った結果、限りなく竜に近い記憶を残して活動を継続している。
わざわざそうしたのは結局、私だけではなくダリア含めた他の竜すら排除した自分の理想を実現しようとしたのだろうね。つまりこいつ、竜の兄弟や私達より人間に親近感を覚える変態ということだ。実に呆れる限りである。
<タンベラ(俺もいいかな)>
あんまり使えなかった。規模の問題もあるが、使い心地がよくなかった。他のやつらから最も可愛がられていたようだが、私はとくに可愛がっていない。ただ、あの人の近くによくいたからそのことは気になったというか邪魔だった。
私を嫌っていたのかは定かではないが……何を思ってか、自分から寄ってくることもよくあった。まぁ、調子をとりにきていたのであろう。だから私もこいつを特に嫌いとも思わないが、特に好きとも思わない。感心できないクダラとでも評そうか。
ただ、これもそうした要素から油断したのもあったのだと思う。こいつも今にある私にとって、結局は憎い対象と言ってよいだろう。だからついでに憎いことにしておく。
・・・とまぁ、こんなものだろう。総じて言えることは私はこの子達を許さないし、憎んでいるということだ。
私に殻を叩かせないという所業は断じて許されることではない。だって、こちらの世界において。それ以上に可哀想で悲劇的なことはないだろうからね。
【女神の独り言/Tier1】―END