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「World Of GranDariya」  作者: アマタキ
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【真竜タオロン】―神々の消失と原初の英雄―

 この惑星には遥か遥か、ずっと古の世界が存在した。海に数多の生命が生まれて消えて、地上には植物が生え始めていた頃のことである。


 命を宿す地としては赤子のような惑星……そこに一対いっついの神々が生じた。彼らはここで産まれたのか、どこからか来たのかは知れない。


 神々は事を成すことでこの地に新たな生命を生み出した。それらの一種は今日に“人間”と呼ばれている存在であり、また別の一種は“竜”と呼ばれる。しかし人間を含む他の全てはいわゆる行為の零れ物に過ぎず、勝手に生えた存在でしかない。ただし竜だけは神の腹から産まれてきた子である。


 仲睦まじく、いつも一緒にあった神々だが……ある日にして悲劇が起きた。


 いつも一対として在った神の内、片方が突如としてこの世界から消え失せたのである。かれが自ら姿を消したのか、それとも消されたのか、消えてしまったのか……それは知れない。


 ともかくとして残された神は均衡きんこうを失ったらしい。神々は一対で初めて調和を保ち、互いに支え合う板のように成り立っていたのであろう。片割れを失った神の精神は倒れ、ガラス板のようにひび割れてしまったのかもしれない。


 そうした彼女の精神から闇が生じ、世界を暗雲が包み込んだ。そして邪神が産まれた。


 産み出された邪神は他の全ての生命を搾取さくしゅし、破壊の化身として惑星を蹂躙じゅうりんしていく。あるいはその行為こそ番を求める探索行為だったのかもしれない。特に人間は徹底して2つある口の1つに食われていった。片割れの片鱗を持つ人間は邪神にとって面影ある存在だったのかもしれない。


 無垢な赤子と同じく、裸で何も知らない人々はただ邪神に摂取されて消えていくだけであった。それだけならともかくとして、邪神はただ在るだけで惑星の秩序を破壊していた。


 1つだった大陸は分裂し、惑星に元々あった生命の多くは絶滅した。同じく、神々によってもたらされた生命も次々と消滅する運命にあった。邪神の行為こそが自然そのものとも言える。


 そうして破滅的な世界を見かねた存在がある。神から生じた邪神に対抗しうる存在……それは同じく神から産まれた“竜”しかなかった。


 竜は全てで6体が存在し、特にその中で力ある者が機会を伺って反撃に出た。この勇気ある竜はタオロンであり、他の竜達がそれぞれに理由をつけてあらがわない中で唯一、邪神に挑んだ存在である。


 しかしタオロンは敗れた。神の子と言える竜と神の分身――もしくは姉妹とも言える邪神では力の差が圧倒的にあったのであろう。敗れて哀れ、邪神の玩具となったタオロンだが……しかしそれでも彼は諦めていなかった。


 タオロンはただ力ある竜ではなかった。この者こそが真に勇敢なる討伐者、全ての勇者達につらなる祖と言えよう。


 邪神の力を浴びてその身を黒く焦がされても、どれほど醜い姿に慣れ果ててしまっても……タオロンは常に状況の改善に勤めた。暗がりに堕ちたその身に邪神の力を吸収し、そして遂に反撃の時を迎える。


 油断した邪神へとタオロンが襲い掛かった。力の差はまだあるものの、機を狙った襲撃に邪神が劣勢へとおちいる。これを見た他の竜達は動揺した。暴虐とはいえ、竜である自分達にはさして害の無い邪神を討つべきかどうか……。


 ここで唯一の翼無き竜が姉をせっついた。人間を飼って遊んでいた彼女は初めこそとても面倒そうにしていた。しかし、弟の案を聞いて次第に表情を明るくすると、勇気ある兄の元へとすっ飛んで行った。彼女に付き従う弟達もついでについていく。


 3竜の支援を受けたタオロンはそのまま邪神を押し切った。邪神に突き刺さった勇竜の角が杭のように岩盤へとめり込んでいた。


 そして、神の腐敗した精神を宿す者はこの世で最も大きな山へと押し込まれ、そのまま山ごと圧縮されて封じられたらしい。それは開けない岩の本となり、惑星の地中に沈んでいった。


 邪神を討ち果たしたタオロンはしかし……その代償として崩れ去ってしまう。灰となって崩れた彼は微塵も残らず虚空に消えたという。ともかく、神の時代はここに終わった。



 ――ここから竜とその命を継ぐ者たちによる新たな時代が始まる。それは今も脈々として続いているこの日々に他ならない。


 竜の名は人々の歴史に失われないであろう。それを導く3竜はもちろんとして、世界の転換を行った勇敢なる誠実者もまた、存在を失っても永遠なるべき者である――




【世界転換/Tier2】





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