表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「World Of GranDariya」  作者: アマタキ
15/15

テッペル峠の反乱軍

 それは少年と少女が歩み過ぎる150年ほど前……。


 テッペル峠はこの時代、帝国と主にマバラードなどの中立地を結ぶ重要な貿易ぼうえき路となっていた……が、この頃は事情が異なっており、本来のもちいられ方はしていない。


 この時、テッペル街道は一般の方々が気楽に通れるものではなかった。それはこの渓谷が“反乱の中心地”と化していたからである。


 オルダリア帝国とはつまり、この大地に生きる人々が最初にみちびかれた地。それは脈々と続く始祖竜の血統……ブローデンによって長く統治されてきた。


 帝史ていしにおける最大の内乱はというと、聖圏が形成される原因ともなった”教夫きょうふ巡礼じゅんれい”であろう。それは2大国による対立という現在にも続く世界の大前提を作り出した。


 それほどではないが……しかし、この時にある状況も中々にせいがたいものである。


 テッペル峠の中腹辺り。断崖だんがいけずり、め込むように建設された大きなとりでがある。


 黒練岩こくれんがんを主な建材として造られたそれは宮殿でもあり、荘厳そうごんな大広間を備えていた。そこでは日々、数百名を集めた集会が行われていたらしい。


 毎日昼前になると渓谷に響き渡る演説。強い日差しをり返す黒岩くろいわの砦内部にて、こわ高々に自己の生まれをめたたえる存在。


 全身を黒衣のころもおおい、赤髪には装飾が多く垂れ下がっている。口元には紫の化粧けしょうつやをおび、指先では無数の指輪や腕飾かざりがこすり合わされて「ジャラジャラ」と、動くたびに金属音が鳴り響く。


 挙動大げさに金属がうるさく、声も甲高かんだかくよく通る……。まるで聖圏の大教夫だいきょうふかよと見まがうほどの荘厳なで立ち。


 それは帝国に名高くも、しかし暗部たる者として堂々と光をびることのない一族……。


 ドゥアンダ平原の殲滅せんめつ戦にて双璧の英雄となり、その一角として名を上げたかの”キャラバック家”。その4代目当主にして黒衣ブラックケープ総帥そうすい、初代以来の神童としてあがめられた天性の魔役士まえきし――それこそが【メルギアス=フォランド=ミュラー=キャラバック】である。


 化粧をほどこした中肉ちゅうにく中背ちゅうぜいな中年の男性は自身の栄光ある家柄を誇り、そして兵団を前にしてうたい上げる。


 黒岩の大広間に射し込む日差しを浴びて、叫ぶように栄誉を、それにそぐわぬ不当なる帝国のおろかさを、感情豊かにべる帝国暗部、黒衣の総帥……。


 “ブラックケープ(黒衣)”という組織はその名の通りに黒衣こくいを象徴としている。彼らは帝国の闇にき、聖圏をおもとした他国を水面下で牽制けんせいし、国内においても世の暗がりで事を成す集団だ。数少ない魔役士のほぼ全てはここに所属し、それら魔術師や魔法使いを統率するのが代々キャラバック家の役割であった。


 それはそれで名誉あり、権威けんいある立場であろう。実際、世の皇帝達も彼らを尊重し、特別な待遇を与えていた事実もある。


 しかし、暗部は暗部。闇は闇――。


 自身を「光ある魔導士」として、その存在が多くの人々から絶賛ぜっさんされるべきである、と。メルギアスは幼少期からそのような不満を抱いていた。


 渇望かつぼう壮年そうねんなってついに爆発。影響力を次第に高め、やがて組織をひきいて帝国からの独立を宣言、蜂起ほうきいたる。テッペルの黒砦はその象徴としてきずかれたものだ。


 彼の意思に便乗びんじょうした人々の合流もあり、反乱は大規模なものへと発展。彼らは反乱軍としてテッペルとうげに陣取ることとなった。


 つまりこの時代、帝国は内乱状態にあったのである。


 そうした情勢……テッペル峠は反乱軍の本拠地として、またその付近は帝国及および親密国家や軍の駐屯ちゅうとん地と化していた。


 当時の帝国はこれだけでなく、「紅血こうけつの事変」と呼ばれる宗教的混迷も併発へいはつしており、どちらかというと本拠地アプルーザンを舞台とするそちらの問題にしばらく頭をなやませていた時期でもあった。


 時の皇子であるユウマ=ブローデンによって首都の事変は解決をみたものの、その間に増長したメルギアスは私兵団をも結成。事変から数年後に勃発ぼっぱつしたキャラバックの乱(黒砦の乱)については後回しとなってしまった。逃れた事変の魔女を追撃する関係もあったのだろう。


 帝国軍は再編に時間をようしたか、反乱発生後も本隊は中々に到着せず。他国を中心とした同盟軍と反乱軍のにらみ合いはテッペル西方の草原付近で膠着こうちゃくした。


 混迷極める情勢。状況を見かねたエルダランドのアイザード将軍まで出張るか、といううわさまで流れる始末。キャラバックに長年仕える大悪魔、ローゼンハックきょうすら手に余る反乱の首謀者しゅぼうしゃ……。


 混乱の帝国と乗り気ではない同盟軍、そして異様な活気に満ちた反乱軍の構図は年を越えても続いていた――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ