『紅き炎:アグリサス・フェノー(R4)』
そんな私にできることは彼らにせめて良い夢想の中に居てもらうことだ。申し訳ないが完全ではないのでね、誤魔化すことしかできない。
有意義なように、意味があるかのように。
停滞して淀む泉になってはいけない。彼らの世界は常に流動して刺激にあふれるべきだ。
だから戦ってもらう。生命の、化学反応の基本は衝突にある。
人間共の争いなど、いつでも終わらせられる。だがそうしてはならない。
戦ってもらわなければ。常に循環して流動的であってもらわなければ。
何故なら私が完全ではないから。完全であれば停滞した世界も淀ませないだろう。だが、今の私にはそれができない。
生命だからだ。私はまだ、生命でしかない。
生命だから恐れもあるし、不安もある。いつ母が起きるかと思うと夜も眠れないよ。
しかし、私の未来には目度が立っている。大丈夫、安心してほしい。
私が絶対的な神になりさえすれば、母が起きたとしても渡り合える。
その時は完全に支配してみせよう。万全な世界でどうか幸せに生きてもらいたい。
あと何度か……数千年、あるいは数万年はかかるかもしれないけど、その程度だ。
その程度の時間だけ、無意味な意味を求めて生きてもらおうではないか。
なぁ、薄汚い姉弟達よ……。