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気が付くと見知らぬ場所で寝ていた。寝ていたというよりは眠らされていたのだ。
「ここはどこだ?」
全体がガラス張りの部屋。しかし部屋の外は何も見えない。正方形の部屋で床は冷たいタイルだ。辺りは天井についてる電気で白くなっている。
首には金属でできた首輪をはめられている。
「だれかいますか?」
壁を叩きながら叫んで助けを呼ぶが誰もこない。状況を整理すると拉致されて監禁されたのだろう。今が何時かはわからない。というより、いつ拉致られたのかすら覚えていない。
目が覚めてから少し経った時、どこからか放送の声が聞こえてきた。
「あー、あー、マイクテスト。聞こえていますか?」
若い女の人の声だ。緊張感のない声があたりに響く。
「ん?反応が薄いけど多分聞こえているよね?今から身元確認をします。合っていれば頭の上で丸を作ってください。わかりました?」
少し戸惑いもあったがここは言う通りにしておこうと頭上に腕で大きな丸を作った。
「お!聞こえていたんだね!よかったよかった、素直に言うことを聞く子で助かるよ。それでは本題にはいります。」
声が少し低くなった。
「あなたの名前は遠上 尊、年齢17歳であっていますか?」
大きな丸を作る。いかにも、僕は遠上尊、高校2年生の17歳だ。
「わかりました!人違いでないことを確認。」
「すいません。ここはいったいどこなんですか?早く家に帰りたいんですけど。」
こちらの声が聞こえているかわからないが質問をしてみる。
「私がそれに答える義務はありません。ご了承を。」
冷たい声が響く。こんなに温度を感じない声を聴いたのは初めてだ。
「あなたには私共の実験に付き合ってもらいます。これが終われば家に帰れることを約束します。」
「実験?」
「はい。とてもシンプルな実験です。あなたはただボタンを押すだけでいい。それを数回繰り返し終了とします。」
淡々と説明を終わらせた。内容は深くは教えてはもらえなっかた。でも数回ボタンを押すだけで家に帰れる。状況はどうにしろ家に帰れるから早いとこ終わらせよ。
「実験の内容は命の重さです。」
命の重さ?どういうことだ。
困惑している尊の横の壁がゆっくり空いた。空いたというよりは隣にあった部屋が見えるようになった。この部屋と同じような雰囲気だ。
「これより実験を始めます。」
放送の声が入ると同時に床からボタンが出てきた。2つでてきたボタンの1つは「殺す」もう1つは「死ぬ」と物騒な言葉が書いたあった。
「ボタンを持っているのは尊さんだけで隣の部屋のものは持っていません。説明をしますと「殺す」ボタンは隣の部屋のものが死にます。「死ぬ」ボタンはいわば自殺ボタン、あなたが死にます。選択の権利はあなたにあるのです。」
何を言っているか僕には理解できなかった。殺す?死ぬ?何を?なんで?何のために?
「そしてこの実験終了時には協力の報酬として10億円をあなたに差し上げましょう。この権利もあなただけに発生します。」
多額の借金のある家庭の僕にはありがたい報酬だ。でも、人を殺してまでは欲しくはない。
「途中で棄権はできません。もしそうしたい場合は「死ぬ」ボタンを押してください。するとあなたのつけている首輪が爆発します。」
「途中棄権ができないってことは今棄権することは可能なのか?」
「はい、可能です。ですがいいのですか?調べたところご両親に多額の借金があるようですが。中にはあなたが負債しているものもありますね。」
事実だ。子供の俺の名前を使って金を借りていることもあった。
「それに実験はもう始まっていますよ。今回の被検体は「蚊」です。」
蚊?虫の?そんなのを殺すだけであんな大金がもらえるのか。
「蚊を殺すだけでいいのか?」
「はい、既に1匹の蚊は隣の部屋にいます。それをボタンを押し毒殺してほしいのです。」
「実験は何回つづく?」
「計10回。」
10回でいいのか。しかも蚊を殺すだけで?やるしかないだろ。
「やります。」
尊はそう言い終わると「殺す」ボタンを押した。隣の部屋の隅々から煙が出てきた。
「congratulation!蚊は死にました!おめでとうございます!それでは次にいきますね。」
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