第十話:少年は扉を開ける
狭い通路を抜けたムイタとユウサリは、コルトに渡された地図にあるギルドを目指す。
ダンジョンへ通じる通りは、冒険者目当ての露店が並び、様々な人々の活気で溢れている。
冒険者ギルドが軒を連ねる街の中心へ通じる道から少し脇にそれた道に二人は入る。
道は上り坂になっており、石畳で舗装されている。
「……(キョロキョロ)」
ユウサリが紅い瞳周囲に向ける。
二人が歩く通りは大通りより狭いが、人々の活気はむしろ増すようだ。
右を見ても左を見ても飲み屋や食事処が並び、昼間であるにもかかわらず酒を飲む男女で溢れている。
「こっちの道に来たことがないのか?」
「……(コクリ)」
あいかわらずの無言。だが、ムイタには少女の感情の機微が何となくわかる。
パーティーは解散されておらず、まだユウサリとの繋がりを感じるだろうか?
いや、きっと自分の視線が少女に惹きつけられているせいだ。
そんな考えを悟られまいと、帽子を被り直しぶっきら棒にムイタは答えた。
「喋れよ、話せるの知ってんだからな。こっちは歓楽街に通じてるんだよ。ダンジョンからもそう遠くないし、潜る前にここいらでメシを食べる奴らも多い。昼間はメシ屋しか空いてないが夜になりゃもっと騒がしくなるぜ。吟遊詩人達もでてくるし、有名どころの冒険者も来るからな、ってコラ!?」
「……モグモグ」
話の最中にユウサリは、露店で売られているソーセージを買って食べていた。
ため息を付きながらさらに進むと、傾斜の激しい道に出る。
ダンジョンの上に建つこの街は、いたるところに坂道が見られ、傾斜を利用した建物も多くある。
特にこの辺りは、傾斜の激しい坂道が多い上に建物の上に建物を乗せたような建築が多く、どう考えても非合理な位置にある入り口や二階からしか入れない扉まである始末。
路地裏を覗けば、もはや混沌の様相となっており、横にある建物が何階建てか判断するのは困難となる。
建物と建物をつなぐ橋が至る所にあり、慣れていなければあっという間に迷ってしまうだろう。
平面の情報しかわからない地図では場所の把握は難しい。
迷宮都市は歓楽街もある意味で迷宮というわけである。
生まれも育ちもこの街であるムイタだが、普段は工房エリアとダンジョン周辺にしか行かないため、この辺りの地理には疎く、必死に地図とにらめっこしながら目的の場所を探した。
ルビーは人の多さを警戒したのかポケットに隠れ、ユウサリは無表情でムイタの後ろをついてくるばかり。
当てにならない一人と一匹をつれてたっぷり時間をかけてムイタは目的地に到着した。
目的地は、いくつかの建物の中をつっきり、宙に掛けられている橋や建物の上を進む必要があり非常にわかりづらい場所にあった。
いくつかの建造物の隙間に寄生するようにせり出した部分が入り口となり、中身がどの建物に繋がっているの外からは判断できない。辛うじて入り口にギルドを示す看板がかかっている程度だ。
「やっとついた。時間ギリギリだ。本当にここであってんのか?」
「……美味しかった」
道中、屋台の食べ物を延々と食べ続けたユウサリは楽しかったらしい。
どうやらこの少女はかなり健啖家のようだ。
「やっとでた一言がそれかよ……」
呆れた軽口を叩くものの、ムイタは入り口で止まっていた。
夢へと続く道が扉の先にあると思うと、手が震え、胸が苦しくなる。
本当に自分は冒険者になれるのだろうか?
「ニャス!」
ポケットからでたルビーがハンチング帽に登りタシタシと前足で叩く、まるで進めと促しているようだ。
「わかったよ。……フゥ、行くかっ!」
深呼吸を一つ、頬を叩き。手汗を服で拭う。
ドアノブに手をかけ、少年は扉を開けた。
遅れてすみません。短いですが切りが良いのでここで投稿します。次はすぐに投稿できそうです。
ここまで読んでくれた貴方に格別の感謝を。
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