表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

閑話:恩寵を手にするのは誰か

 冒険者が集う迷宮都市『ピスティ』。そこで冒険者達迷宮攻略の為に利用しているのが冒険者ギルドである。

 その業務は多岐にわたり迷宮の恩恵に対する依頼の仲介、目的に沿ったパーティーメンバーのマッチング、中にはその腕っぷしを買われた迷宮とは関係のない仕事の依頼を受けることもある。

 幅広い冒険者達への依頼を仲介するギルドもあれば、高難易度依頼を中心に高【位階(レベル)】の冒険者達のみ入会が許されるギルドもある。

 冒険者の多くは自身の能力や目的に沿ったギルドを拠点として活動している。

 

 多数の冒険者の拠点である『大手』のギルドの一つ『猛炎の宴』はそんなギルドの中でも迷宮攻略を目標に掲げるギルドだった。

 入会規則も厳しくギルドのメンバーであるだけで他の冒険者から羨望の眼で見られる。

 その『猛炎の宴』で会議が始まっていた。八人ほどの制服を来た者に、装備を身に着けたも冒険者が三人、円卓を囲んでいる。


「それでは、今回の遠征で目立っていた有能株を説明いたします」


 火と破壊の神【ファオジール】の紋章が胸に施されているギルドの制服を来た、女性職員がリストを読もうとするが、一人の男が手で制止する。


「あー。ベスチカちゃん、先に女性冒険者から上げてくんない? 野郎の精査は君らに任せるよ」


「エーッ、ちょっとレオ。私がいるのにそういうこというの? 燃やすよ?」


 男の脇には胸元が開いた扇情的な服でしな垂れかかる女性が指先に火を灯す。

 ベスチカと呼ばれた職員は、微かにため息をついてリストを何枚かめくった。 


「レオ様、ナシア様。会議ではそのような態度はおやめください。……男女問わず、今回の遠征でもっとも有望だった者がいます。知っての通り、今回の遠征は表向きはギルドの入団試験でしたがその実は有能な【恩寵(スキル)】持ちを見つけ出すことです。書類作成の際に偽造した用紙を使ってサインの際に保有するスキルが分かるようにしています」


「まぁ、他のギルドに有能株が取られるの面白くないしね。俺のパーティーつーかハーレムメンバー探しも兼ねてるから」


「まったく、本気になったら許さないから」


 レオとナシアともにギルドを代表する冒険者である。二人とも【火と破壊の神ファオジール】が守護神であり、二人とも炎を操る戦闘を得意としていた。

 人前では、いかにも誠実な冒険者を装っているがその実、レオは好色で女性冒険者を無理やり自分の物にしては捨てるということを繰り返していた。

 ナシアは魔術師であり、蛇のように嫉妬深い。レオが手を出した女性をさらに辱め、時には奴隷に落とすことをしていた。何をするにしても自分が一番でないと気が済まず、弱者を徹底的に痛みつけることに快感を見出す質であった。


「あの、白い髪の女だな?」


 黒い肌に腕に【岩と堅牢の神グラミドロ】の紋章の入れ墨をしている大男が喋った。


「はい、イアン様。最近この街に訪れた冒険者です。調査によれば近隣の野良の迷宮を攻略しているようです。今回の遠征でも【契約】を使わず、ソロで下層まで潜っています。当ギルドへ入団していない所をみると、補給の目的で遠征に参加しただけのようですね」


「へぇ、見てなかったな」


「イアンがその気になるなんて。すごいのね~、可愛いの?」


「私は直接会っていませんが、巷では噂になっているようです。息を飲むほど美しい剣士が最近一人で迷宮を潜っていると」


 ベスチカは一枚の紙を机に置く、そこにはユウサリの名前から生まれやギルドが記録している戦績が書かれていた。ナシアが紙を持ち上げ、目を細める。


「北方貴族の生まれだけど家を追われたと、騎士にならず冒険者に。野良で発生している地方のダンジョンを攻略しながら各地を転々としいる、なんかの大会で優勝までしているのねぇ。【恩寵】は……書かれてないわね」


「先行して十階層の魔物を刻んでいた。腕は確かだ。あの女は……俺が貰いたい」


「おいおい、イアンが女を欲しがるなんて、そんなに凄いのか。ちょっと興味湧いたね、俺にもつまみ食いさせてよ」


「……気にいらないわね」


 下卑た笑みを浮かべるレオを見てナシアが眉をひそめる。


「落ち着いてください。大事なのはここからです。彼女の【恩寵】は通常の鑑定用紙には反映されず、遠征の際にタグを盗み見する必要がありました。彼女は【祝福された恩寵(フレーバースキル)】持ちの可能性があります」


 英雄の条件とまで言われる。伝説の【恩寵】持ちが現れた事実に場が氷つき。

 最初にレオが口を開けた。


「その女はうちのギルドの遠征に出たんだろ? 拠点として登録はさせてんのか?」


「いえ、一応遠征の条件といって仮登録まではしてもらっていますが、本登録はしていません」


「噂では迷宮には潜っているんでしょ? なら……どうとでもなるわよ。ねぇイワン?」


 意味ありげにナシアがイアンに視線を送る。


「もとより、手段を問わず俺の物にする予定だった」


 イワンは立ち上がり、黒いローブを羽織る。


「ハッ、俺も混ぜろよ。他のギルドが動く前に俺達が必ず手に入れる」


「すでに【水瓶の旅団】と【岩窟の狼】等の大手ギルドが噂を聞きつけ探りを入れているようです。ギルドマスターからも必ず彼女に入団してもらうように指示が降りています」


「英雄の【恩寵】? チッ、面白くないわね」


 ナシアの手にあるユウサリの情報が書かれた紙は、彼女の気持ちを表すように燃えて灰となった。 

ここまでよんでくれた貴方に格別の感謝を

ブックマーク&評価ありがとうございます。モチベーションがあがります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ