ほぼエピローグ的なプロローグ①
<ほぼエピローグ的なプロローグ>
どうしてもやりたいことや、何が何でもなりたい職業というものはない。それはいつの時代、どこの世界においても共通なのだと俺は思う。溢れ出る情熱も一過性の紛い物だと。
あの頃のロールプレイングゲーム、覚えているだろうか。名前を入力し、キャラを決め、人々に話を聞いて行き先を明らかにする。敵を倒してお金と経験値を貯めてパーティーを強化していく。レベルを上げ、アイテムを購入、装備を整える。呪文も覚えるだろう。乗り物も手に入るかもしれない。物語を進め、最終的にラスボスを倒してエンディングを迎える。
限られた容量の為に様々な制約があったが、そんな中でも自分で名前や職業を決められるとやけにテンションが上がったものだ。そしてゲームの世界観によって大なり小なり変わってくるが、俺達の世界の花形ジョブといえば『勇者』である。勇者すなわち主人公。魔王討伐の宿命を背負う救世主であり、ゲームプレイヤー本人。そんな勇者の戦闘力は言わずもがな、攻守ともにバランスが取れていて魔法も使える万能型。最終局面では勇者の為の伝説の武具がひょっこり現れるし、勇者専用の魔法まで用意されている始末。世界は勇者を中心に回っているのだ。
続いて『戦士』。魔法は使えないが最強の攻撃力と防御力を誇る、近接戦闘のスペシャリスト。素早さが低いので後手に回ることも多いが、お墨付きの攻撃力は頼りになる。
攻撃魔法を得意とするのは『魔法使い』。体力は低く、攻撃力と防御力は最弱レベル。打撃ではほとんどダメージを与えられないことも。けれどもその名の通り、レベルアップと共に強力な魔法を次々に習得していく。1体の敵に大ダメージを与えるも良し、複数の敵に範囲攻撃を仕掛けるも良し。魔法使いのおかげで戦略の幅がグッと広がるのだ。
他にも素早さに優れ、クリティカルヒットも出易い武道家や、回復魔法と補助魔法を得意とする僧侶など、多彩なジョブが存在する。その中で自分の好みや作戦に合わせて選択しパーティーを組むのだ・・・なんて書くと小難しく聞こえるかもしれないが、なんてことはない。趣味に合わせて、できれば近接と遠距離のバランスを考えて仲間を選べば行き詰まることはないだろう、ということだ。
俺達の国では成人の祝いと共に職業が決まる。運命の歯車が音を立てて噛み合ってしまう。成人の集いとして新成人は一斉に己のジョブが決められるのだ。そして街の一角にある、普段は立入禁止となっている『旅立ちの祠』から巣立っていく。