お茶しましょうか
(どうすんだよ?)
と、佐江川が心配そうな顔で覗き込む。
どうするも何も、ウィンウィンじゃない♪とウインクして返すと(今はそういうこと言ってる場合じゃないだろ!)と真剣な目で見つめてきた。
「美味しいな、ここ。」
それを無視して言う。下見したときも思ったけどとても美味しい。それにこの店は美里が喜びそうな雰囲気の場所だ。
あぁ!もう!佐江川がもっとグイグイ男らしくいく性格だったら良かったのに…。美里との関係が『千佳ちゃんの幼馴染で片思いの相手』のままじゃ急にグイグイ話しかけても空回りそうよ!
「ほんとに美味しいよな。…芹川、大丈夫か?」
それに比べて三和は好きな相手の心配を欠かせないなんて、佐江川より全然男らしい性格してるわ。ていうか、いつまでウジウジしてるのよ!
私の睨む視線に気がついたのかビクッと体を震わした。
(ごめんって!)
そうやってすぐ謝る。私より女々しくないかなぁ、佐江川ちゃん?
「大丈夫よ?美味しくて言葉を失ってただけだから!」
セリフに感情はこもってる。確かに、私っぽいのかな?けど、最後に表情が引きつったのは残念だったかな。私にしか分からないくらいのものだったけど、後でもっとしごかないと行けないわー。
「ここのケーキ、ほんっとに楽しみにしてたのよねー!」
吹っ切れた佐江川が私のいつものテンションに追いついてきた。内心涙目でやっでるんだろうなぁというのを考えると笑いがこみ上げてきて危ない。気をつけよ。
「ここのケーキ、ほんとに可愛いよね!」
そんなこと言う美里のほうが可愛いよねー!
「そんなの腹に入れば同じだろ?俺は味を重視する!」
「もぅ!分かってないなぁ、三和は。可愛くて美味しいからサイコーなんだよ♪」
「そういうもんかぁ?俺はもっと腹が膨れるものが食べたいね!」
「お前…一番食ってただろ。」
「そうかぁ?」
なんと順調に進む会話でしょうか!これは、二人が入れ替わったなど、全く気づきもしないでしょう!
そうですねぇ。特に芹川さんは自然に馴染めてます。
と、脳内で実況が起こるほどテンションが上がっている私なんだけど…。
「ねぇ…大丈夫?千佳ちゃん?」
はぁあ!いつもの私のポジションがぁ!近い!近いよ!みさとぉ!ソイツは見た目は私だけど、中身はただのヘタレなんだって!
「何が?」
平然と装ってるけど佐江川のやつも冷や汗ひどいんだろうなぁ。
「その…いつもは、抱きついたり…私のケーキをねだったりしてるから…その。」
寂しい、と。なんと可愛い!恥ずがってるの?耳まで真っ赤で?でも、いつもみたく抱きついてほしいの?(←多分これは私の妄想で、本当にいつもと違う私を心配してるだけなんだろうけども)はぁ…可愛い通り越して美里のその才能が怖いよー!
今は私は佐江川だ。だからぶち壊したくても出来ない。
(がんばれよ!全ては佐江川にかかってる!)
「…」
助けを求めてきた佐江川にそうやって念を送ると何かいいたそうな顔(私にはこれが私への文句を1つ2つ言おうとしていたことがわかったが)をしていたが私は何もできないのだ。がんばれ!
「えぇ…と。その…。」
(なにか言って!)
(何かってなんだよ!)
「あ…と…佐江川と約束したから!ね!佐江川ー!」
アイツ…私に振ったなぁ。でも好都合だね。
「あぁ…そうだな。」
苦笑いしながら返答した。
「なに約束したんだよぉ?」
私の美里に触れないでって。…とは言わない…というか言えない。
でも三和が茶化してきた様子をみるに勝手に恋愛絡みだと勘違いしてくれたんだろう。それも佐江川が美里を好きだという今にとっては好都合なものに。まぁ、佐江川が本当に美里を好きだったとしても「女だからって好きな人にベタベタされるのは」というセリフは言わないだろうけどねー。
美里が「えっ!?佐江川くんが!?」て顔でして顔を真っ赤にして慌てているのが可愛い。あぁ、私のお嫁さん♪幸せにしてあげるからね!
…てまだ、気が早いか。
芹川が使う語尾の『わ』は、お嬢様が使う〇〇ですわ!というイントネーションが上がる『わ』ではなく。「今日、雨なの?マジでないわー。」というイントネーションの下がる『わ』です!