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地下にて
僕は一人で作業をしている。
お茶やコーヒー豆を保存する瓶のような、ステンレスの瓶を手に持ち、瓶の中から黒い粉末を薬サジで慎重にすくい、電子天秤の上に乗せる。
0.1gにできるだけ近づけるように、ゆっくりと少しずつ足していく。
目標の0.1gを越えて載せてしまった粉は、小さくちぎったキムワイプで粉に触れ、粉を少し付着させることで、電子天秤の上の粉をわずかずつ減らしていく。
秤量し終わった粉に、さらに金属の粉末を少量混ぜる。
最後に混合した粉体を小指ほどのガラス瓶に封入する。
どれくらいの時間が経っているのかは分からない。というより、時間の経過に関心が奪われることも許し難い気分だ。
この単純な作業を世界の誰よりも慎重にやり遂げることで、同じような実験をする世界の誰よりも美しい実験結果を得るのだ。
そう思えば、僕はこの作業をあと何時間でも続けることができるだろう。
そして僕は静かに、何時間も椅子に座ったまま、同じ作業を続けている。