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こうして、トラさんはヒトになるのです。めでたしめでたし

作者: 雲丹

めでたし

 「がおー ぐー たー ぎゃー がーがー」 トラさんが鳴いています。面白いですね。

 「こー すこー ふすー ふんぬ さーぴー」 トラさんが寝ています。面白いですかね。

 「ふ は がおー」 トラさんが異世界に来たようです。可哀そうですね。

 「さっさっさっさっさっさ」 誰かがこちらに来ます。面白いですね。

 「ざっざっざっざっざ ぎゃー」 凄い速さで逃げます。人にはいい思い出がありませんよね。

 「ごー すー がー ぎー」 トラさんは走りながら思い出します。

 「ぎょーぎゅー っは」 トラさんはきずきました。

 「ざっざっざっざ さっざっざっさっ」 トラさんの前足が軽くなっていくのです。

 もじゃもじゃだった毛がどんどん抜けていきます。

 「たったったった」トラさんはもう後ろ足だけで走っています。

 そうです、トラさんは寅さんになったのです。トラさんのヒトから逃れたいという思いが、トラさんを寅さんに変えたのです。うれしいですね。

 「おー そー だー」 寅さんはどうして人になったのかを考えますが、わかりません。

 「あー をー そー」 どうやら逃げ切れたようです。喜ばしいですね。

 「うー しー はー」 寅さんは自分の細い貧相な体を見ます。

 「・・・」 寅さんは考えます。自分はこんな弱そうなやつから逃げていたのか、と。

 「・・・」 寅さんは自分が情けなく、そしてみっともなく思えてきました。

 「こー へー がー」 寅さんは本当は何で自分が人になったのかをわかっていました。

 トラさんはヒトを怖がっていました。酷いことをされるからです。しかし、トラさんは心のどこかでいろんな動物に好き勝手できるヒトをうらやましく思っていたのです。そんな思いがトラさんを寅さんに変えてしまったのです。

 「そー がー びー」 寅さんは自分が恥ずかしいと思いました。

 「がー がおー」 トラさんの真似をしてもダメです。もう寅さんは寅さんなのです。悲しいですね。

めでたし

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