4話 腕試し
【あらすじ】夕食たべながら今後の事について話し合いました!
~次の日~
昨日あれから僕たちはいろいろと話し合った。
学さんが執事の方に地図がないかと尋ねると、すぐに持ってきてくれたらしい。
おまけにダンジョンの位置まで記されていたみたいで、流石国王の執事というべきだと思う。
僕は残念ながら見えないので、話は半分半分で聞いてた。
そして今日、僕たちは装備を着込んで兵士たちの鍛錬場にいる。風を感じるし、土の感触も足から伝わってくるから、ここは屋外だ、それも結構な広さの。
聞くと、ここもまだ城の中だという。どんだけ大きいんだろうこの城…城下町もあるんだよね?
だいぶ大きい国なんだろうなぁと1人で思っていると、聞いたことがない声がした。
「初めまして、私はマナ国魔法部隊隊長、ジーク・ニルヴァーナと申します。魔術職のお2人には、私がつかせていただきます。以後お見知りおきを」
「そして剣士職のお二方!俺はマナ国騎士隊副隊長、レオン・ラインハルトという!すまないが隊長は急な用件で今は留守にしておられる、よって変わりに、私が今日1日腕試しや訓練につき合わせてもらう!」
1人は落ち着いていて、どこか知的そうだ。学さんに似てるかもしれないけど、すごい大人な感じがあふれ出てる。
もう1人はまだ若さのある、でも覇気のあるよく通る声だった。
多分年齢は2人とも25歳くらいかな?
「さて、まずは腕試しからだが…ん?どうした、目を閉じて?」
「あ、すみません、僕は生まれつき目が見えないのです」
「な…そうか、すまない、不躾な事を聞いてしまっただろうか」
レオンさんは、謝ってくれているけど、本人と周りで聞いていた兵士の幾人かが、本当に戦えるか?という疑問を抱いているのが、感じられた。
「大丈夫、だと思います。目くらは、目で見えないものを見るのが得意ですから」
「ほう…いや本当にすまない、腕試しは、俺が勇者様方の相手をして動きを見る予定だが、参加するか?」
僕はうなずいた。
目が見えないからと言って、何もできないと決めつけられるのは、意外と不服なのだ。
目が見えなくても、音が聞こえる。土を踏む音や、かすかな振動でも、そこに誰かがいるのか、誰かがどう動いているかが分かる。
そしてなにより、相手の心が分かる。優しさも、怒りも、悲しみも、戸惑いも、すべてが声音として伝わるから。
「では、時間も惜しい、そろそろ始めようか。まずは竜殿」
「はい!よろしくおねがいします!」
竜が、レオンさんと一緒に中央の方に歩いていく。
真ん中あたりに着いたところで、2人はお互いに距離をとるように歩いていった。
惠さんと学さんは、また別の場所で魔法の腕試しをするとかで、移動していったようだ。
「ほう、なかなか綺麗な構えだ。だが俺も油断はしない!いつでも来るといい!」
「すぅ………行きます!」
ダッ!っと、地面を蹴る音がする。
そういえば、竜もよくうちの道場に来て僕と一緒に稽古したりしてたっけ。
正式に入ればいいのにって言ったら、「こういうのは遊びに来るくらいが楽しい」って言ってたっけ。
フフ、竜らしいっちゃらしいか。でも多分本音は「シノの親父さんの稽古とか怖すぎて無理」だと思うけど…。
ちなみに竜は居合じゃなくて普通に中段構えだったと思う。
木と木の擦れ合う音がする。木剣でやってるのだろう。さすがに真剣は最初だし危ない。
素人がむやみやたらに真剣を振り回す事は、自らをも危険にさらすものだから、レオンさんは対処できても、事故で自滅なんかしたら大変だし。
「…くぁぁ!全部受けられたっ!」
「なかなかいい剣筋をしている。これからが楽しみだな」
レオンさんは笑っているようだ。きっと、これからの訓練が楽しみなんだろう、ご愁傷さま竜…。
そんな事を考えていると、僕の名前が呼ばれた。
ゆっくりと、真ん中へと歩いていく。
「レオンさん、よろしくお願いします」
「あぁ、よろしく頼む」
そうして僕は渡された木剣を構える。
腰の方に当て、左足を少し開いて後ろに引き、左手は刃の方を持ち、右手を柄に添える。
鞘がないからちょっとしっくりこないけど、これが僕のスタイルだ。
―――レオン視点―――
今、俺は少し戸惑っていた。
長年やってきて、視力を失いながらなお戦おうという者は初めて見たからだ。
だいたいはそこで絶望し、戦う事をやめる。
だが、そこに立っている少年は生まれながらにして見えていなかったのにも関わらず、構え、雰囲気は明らかに、達人のそれだった。
ただ、静かに、たたずんでいるだけ、剣を腰に当てたまま、納刀している状態のまま、動こうとしない。
だが…あまりにもその構えは、隙がなさすぎた。
「くっ…行くぞ!」
私は全力で動く、移動速度を爆発的に高める『縮地』で瞬時に相手の背後に回り込み、剣を上から振り下ろした。
長年、戦いをしてきた経験でわかる、こいつは、手加減をしていい相手じゃない。
相手は未だ動いていない。俺の振った剣はもうすぐ相手の頭に直撃する。
まさか見誤ったか、と一瞬後悔したが、杞憂に終わったようだ。
相手は振り向くようにゆっくりと、上からの攻撃を最低限の動きで躱し、こちらを向いた。
「僕の剣は、活かす剣、殺すために振るうのではなく、守るために振るうもの」
そういった直後だ。
俺の持っている木剣が…斬れた。
こいつ………いつ…剣を抜いた………。
そして………なぜ…木剣で…斬れるんだ…。
魔力は感じていない。つまり、己の技のみで、今のをやったというのか…。
「試合は…終了だ、素晴らしい腕前、感服しました」
俺は礼をする。相手も礼を返してくれた、その律儀さに、悔しさではなく、素直に尊敬した。
まだ、こんなにも上がいるとは…世界とは、恐ろしいものだ。
増えてるっ!!
ひゃあぁありがとうございますっ!
不定期で申し訳ありませんが頑張りますっ!!
やはり目が見えない詩音だけの視点だと、世界観がわからなくなってきそうなので、ごちゃごちゃにならない程度に、ちょくちょく他の人の視点とかも入れていけたらなと思っています♪