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Discord Fantastica  作者: イニちゃんY.Y
第零楽章 いづれ紐解くディスコード
1/4

プロローグ

  ──はるか上空にて。


  よどんだ空に浮かぶ複雑で壮大な神殿に、突然災禍が舞い降りた。異形とも呼べる生物に太刀打ちできず、『この者』達でさえも一斉に血飛沫ちしぶきをあげるのであった……。誰もがその強さに戦慄をいだいた。

 

  おさは、言った。


「こんな時にあいつはどうした!」


  書記官は言った。


「反応がありません!」


  書記官の返事を聞くと長は、『弟』がこんなヘマで死ぬはずがない、と考えを頭の中で張り巡らせた。一体どこへ行ってしまったんだ......。

  考えていたその時、災禍の音が身にせまっていた。余裕を持って回避したはずだったその音は、右腕を肩から消し飛ばした。


  長は痛みから脅威きょういを感じ取った。


「──ぅ……!」


  と同時に、消しさられた右腕からかなりの速度で漆黒に染められていった。長はすぐに己の状況を悟る。

 ──なす術なく……抗うことも出来ず……洗脳される。


  長は、伝達の音を流した。書記官は頭に響くその音を捉えて神経を集中させた。


 “書記官──!──れ──ろ!”


  書記官はその意味を悟ったのか、困惑の目で主を見つめた。長の目には決意の念が込められていた。


 “──必ず……戻ってきます…………!”


  涙ぐみながら禁忌とされている転移式句てんいしきくを唱える。書記官はこの高度な式句を行使こうし出来るが、人数に限度があるため、見渡せる範囲にいるわずかな数しか対象にできなかった。生き残っていた数名があわい光に包まれ、放物線を描きながら降り立って行く。──もう少しで血で染め上げられたその場から離れる所だったが、不可視ふかしの力によって光の塊が分断された。書記官は目を大きく見開いたが、落ち着いて冷静に対抗式句を唱えようとする。余程よほど難解な式句なのか、解除は間に合わず、数名の強者つわものたちは散り散りになって《十字世界フェルマティスタ》に落ちるハメとなった。


 ──長は言った。操られた体はすぐにだれかの物となって……。──そのだれかは唇をニヤリと歪ませる。


「これほど上手くいくとは思わんかったぞ……?ちょっと逃げられたのは惜しいが、そこはこれから作れば良いか……ククク……さて、お前の弟はどこに行ったのやら」


  千切ちぎれたはずの右腕を瞬時に再生させると、あちこちに散らばる死体を探しに行った。僅かに息があるものは、その忌々(いまいま)しい存在を脳裏のうりに刻み込んだ。


  長は軽く指を鳴らし、背後に現れた黒一色の集団に命令する。すると、黒ずくめの傀儡くぐつたちは四方へと飛び去って行った。



  ──ここからある御触書おふれがきが出るまでは、長い年月が流れることになる……。


  別世界での長い年月は、どのようものだったのだろうか。──災禍が現れてからの一連の余興を見ていた神様は、望遠鏡のように手を瞳の前で丸め……片目を閉じた。


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