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約1000字短編集

殺せない男

作者: sika


 普通に殺せば足がつく。

 何故かと言えば、殺人事件の大半は被害者と加害者に何らかの接点があるからだ。


 ならどうするか? 答えは簡単。捜査線上に俺が浮かばなければいいだけの話。つまり全然知らないし、別に殺したくもない奴を殺せばいい。それなら証拠を残すようなへまをしない限り、俺が警察に捕まることはないと言っていい。


 関係ない奴を殺してどうするって? そこら辺は俺にもちゃあんと考えがある。


 交換殺人、って聞いたことあるか?ま、簡単に言えば利害関係の一致ってやつだ。俺は「あいつ」を殺したい。で、もう一人俺と同じような奴がいて、「そいつ」も誰かを殺したい。俺たち二人の殺したい相手を入れ替えるって寸法さ。


 もちろん「そいつ」は全くの他人がいい。それにある程度の知恵と度胸も必要だろう。こっちが殺したってのに土壇場でビビられても困るし、人に見られるような馬鹿はこっちから願い下げだからな。


 で、こっからが問題。


 ネットの掲示板じゃ「そいつ」を探すにゃどうにも不安だ。かと言って赤の他人、それも誰かを殺したいと思っている奴を見つけるなんてそう簡単じゃない。実際人には誰かしら殺してやりたいと思ってる奴の一人や二人はいるもんだ。でも、それを本当に実行に移す行動力のある奴はいない。それが普通だ。じゃなかったらそこらで毎日のように殺人事件が起こってる。


 それに人殺しなんて多くが突発的な犯行だ。ムカついたから殺す。見られたから殺す。金が欲しいから殺す。どいつもこいつも短気に過ぎる。そりゃスカッとはするかもしれない。だけど自分が捕まる前提で殺すなんて、俺に言わせりゃただの馬鹿だ。


 目指すは完全犯罪。それが交換殺人てわけだ。


 だがいかんせん相棒が見つからない。そもそも見つけ方が分からない。「そいつ」と使う用に、新宿で飛ばしの携帯も手に入れた。でも、「そいつ」がいない。俺は今すぐにでも「あいつ」を殺したいのに。


 とうとう我慢できなくなって、ネットにアクセスしようとした。そこで俺は気づく。全く他人の「そいつ」とも、ある程度は信頼関係がなければ交換殺人は成立しないことに。


 考えてもみてくれ。俺が知りもしない「誰か」を殺しても、「そいつ」が「あいつ」を殺すっていう保証はどこにもない。それは逆も言える。「そいつ」が「あいつ」を殺しても、俺が「誰か」を殺すとは限らないのだ。反故ほごがあった場合やり取りを警察にバラしても、互いに相手の憎む人間を殺しただけ。それはつまり自分にとっての他人だ。

 

 関係ない他人を殺して捕まる?

 そりゃただの間抜けってもんだ。さてどうしよう。困ったな……。


「おい塚原、ぼさっとしてねえで契約の一つでも取ってこいよ。ったく使えねえな」

「は、はい。すみません……」


 結局俺はいつも通り「あいつ」が事故にでも遭うのを祈ることしかできない。


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