隆と同じ市の短大に進学する
この作品は、全て妄想であり、創作です。
隆は建築家になるつもりだと言った。
今だったらスマホやパソコンで、一瞬にして調べられると思うが、私は当時、建築家とか言われても、家を作る大工さんと何が違うのか分からず、勿論隆には聞けなかったので、周りの賢い友達に建築家とは何ぞや?と聞いて見た。
一級建築士になって修業を積んだ人が建築事務所を立ち上げたりする。ほらベテラン女優のあの旦那さんとか有名じゃない?と、私でも知ってる著名な建築家の名前を挙げた。
そっかぁ。隆が行こうとしてるのはそんな世界なんだ。私みたいに、英語だけ唯一落第点じゃないから、取り敢えず英文科を受けるかって私とは天と地ほどの違いがあった。
私は隆に憧れる気持ちと同時に、強烈な劣等感を感じざるを得なかった。
まぁ、勉強もやったが、今まで遊び暮らして来た自分の高校生活の空虚さを悔いた。
部活をやった訳でも無く、何か好きなものがある訳でも無く、勉強も何が好きなのか良く分からず、ましてや将来の夢など何一つ思い浮かばなかった。
そうしているうちに....
月日はあっと言う間に過ぎ、受験シーズンは容赦なくやって来た。
私は、大切にこそされたが、慣れない叔父の下宿生活にも神経を擦り減らし、思うような模擬試験の結果も上げられず、親身に相談に乗ってくれる生活指導にも恵まれずただ孤独だった。
そして、隆はK市の国立大学の工学部建築科に一発合格。私は隆が受ける大学の同じ市にあると言う理由でだけ選んだ大学の短大の英文科にギリギリ引っかかった。
今考えると、二年間、何であんなに強烈な劣等感に苦しんだのか良く分からない。何もそこで、仮に英語じゃなくとも、他の語学でも、他にやりたい事でも、自分で道を探して一生懸命頑張れば良かったのだ。
若さと言うのはたまに、腐れプライドが邪魔だったりする。自分だけが不幸なのだと、とんだ勘違いをする。自分を褒められなくて異常に自分を責めたりする。
人によってはどんな環境に置かれても、その場その場を自分の世界にして楽しんでしまう人がいる。私は残念ながらそうじゃなかった。
毎日毎日、腐れプライドに苦しみ、劣等感に苛まされ、隆の周りにいる有名女子大の連中にどうでもいい理由の嫉妬で苦しみ続けた。
そしてそれは、残念ながら、隆と過ごした二年間、私は最期まで克服する事が出来なかった。
隆と同じ市内に行けたのにね?