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僕の妄想なんだから言うこときけ!  作者: 平平尾
はじまり
4/5

はじまりのつまさき

 気づけば僕は逃げ出していた。

 

 そのことで後々どんな事態を招くかなんて考えていなかった。

 とにかくこの場所からなるだけ遠く、できれば国境まで超えて走りたかったけれど、残念ながら日本という島国に生まれた高校生には、そういう選択肢は用意されていなかった。


 だからとにかく、自分の力が尽きるまで走った。


 いつもの街が勢いよく通り過ぎていって、まるでいつもの街じゃないみたいだった。

 ごっそりとディティールの抜け落ちた、薄っぺらい絵みたいな街が僕の横をながれていく。


 ——どこだ?どこへ行けばいいんだろう?このまま行くべき場所なんてあるのか?


 そうやっているうちにとうとう僕の身体は悲鳴をあげた。

 映画で主人公がやっているみたいに肩で息をして、そして気づけば、僕は自分の家の前にいた。


 結局高校生が逃げる場所なんて、自分ん家が関の山なのだ。なんて無様な駆け込み寺。

 

 買い物にでも出ているのか、幸い母は居なかった。

 僕は部屋に入ってドアを閉めて、それでも気持ちが落ち着かないことに気づいた。

 

 どうすればいい?これ以上、どこに逃げ場所なんてあるんだろう。

 

 学校では今頃、午後の授業がはじまっているはずだ。社会科のミヤウチ(センセー)が気づいて、そしてあの二人のどちらかが何か言うのだ。

 たとえば「なんか、屋上で沢野さんにふられて学校を飛び出していきましたよー」とか、または「沢野さんと遊んでたら、突然正也くんがキスしてくれって言って、私たち怖くて逃げたんですよー」とか言って、僕はクラス、いや、学校中の話のネタにされる。

 

 昼休みにクラスを抜けて、一人屋上に行くようなやつは、何を言われたって仕方がない。ましてや、今その場所に、僕はいない。嘘や適当なことを好き勝手に言われて、それがまかり通る世界。

 

 そうして僕が守り続けた高校生活は終わりを告げた。

 なんて無様でださい終わり方。

 誰一人守ることもできず、正義すら貫くことができず、結局は自分の責任だけを放棄した。

 でも、もう取り返すことはできない。ゲームのようにセーブポイントでやり直すことなんてできない。


 ——さよなら、平凡な学生ライフ。


 絶望の奥に、不思議と冷静なところもあった。


 だからその冷静な思考で、僕は、僕の世界を築こうとおもった。


 僕が創造主(ゴッド)だ。


 僕のいるべき楽園(ユートピア)だ。


 ハロー、ワールド。

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