龍の威を借る虎
虎ノ介は焦っていた。
想像以上の羊太の実力、そして手加減を全くする気のない龍広に。
(あいつ、全力じゃねえか…くそっ!)
宗馬も一言も喋らず打開策を考える。
(羊太の実力を一番近くで見てきたのは俺だ、俺がなんとかするしかない。だがキャプテンの実力は羊太以上だ。唯一の救いは、PGが一年ってところか…)
長い静寂が続く。
そんな中最初にこの静寂を破ったのは早人だった。
「俺が1対1で羊太とキャプテンをぶち抜きます。」
宗馬が反論する
「パスもできず、味方のボールを奪うお前にそんなことできるわけねえだろ。」
「できます。」
「誰のせいでこんな点差ついてると思ってる!素人が!」
「宗馬!!これはお前らの実力を測るミニゲームだ。熱くなりすぎるな。」
「はい…虎ノ介先輩…」
(まぁ俺もだいぶ熱くなってたがな…)
虎ノ介は話を続けた。
「なぁ橘。1対1ってのはどういうことだ。」
早人は答える
「実は俺、5対5がはじめてなだけで1対1ならやったことがあるんです。はじめてのチーム戦で戸惑ったけど、仲間にパスとかしなくていい、完全に1on1のスタイルなら絶対に勝てます。」
「だから勝てるわけねえだろ!1on1の経験っていったってどうせ友達と遊ぶ程度だろ!!そんなんで経験者ぶるんじゃねえよ!」
「宗馬少し黙れ。」
虎ノ介の一喝により静寂が再び訪れる。
だがその静寂を破ったのは虎ノ介自身だった。
「アイソレーションだ。」
「あいそれーしょん?」
早人は聞きなれない言葉にただ復唱するしかできなかった。
虎ノ介は作戦をみんなに伝えた。
「どうせこのままいっても負ける。橘に賭けてみようぜ。」
両チーム休憩が終わり
今、後半戦がはじまる。