二人の巨人
「それじゃあ今から全学年合同で試合を行う。」
キャプテンの龍広は呼びかける。
「これはいわば一年の実力を見る試合だ。俺と虎ノ介をキャプテンとし一年生は二チームに別れてもらう。負けた方にはペナルティでもつけようか」
一年は3人と4人の組みに別れた。
「ちぇー羊太と離れちまったかぁ」
「宗馬には負けない。」
各々が試合に向け準備を始める。
そんな中とても落ち着きのない男がいた。
(うわぁぁぁ!はやく試合してええ)
早人は5対5で行われるバスケが人生ではじめてだった。
楽しみでしょうがないらしい。
「試合は1年3人2年1人3年1人で行う
4人のとこはローテーションでやってくれ。
それじゃ2年と3年を振り分けるぞ。」
龍広は羊太のいるチームに入り
虎ノ介は早人、宗馬のいるチームに入った。
(うわぁよりにもよって橘ってやつは3人のほうか…交代なしってことはハンデになっちまうかもな…)
「おい虎。お前失礼なこと考えてただろ」
「さぁ?なんのことかなぁ」
(ちくしょう。龍のやつ…なんでもお見通しか…)
虎ノ介はチームを見渡しいった
「あー今日はとりあえずポジションは適当でいいや。えーーと宗馬だっけ?お前PGやれ。一年が自分なりにまわしてキツければ外から俺達上級生がうつ。」
一方龍広は
「羊太。俺とお前が中に入る。
本気で勝ちに行くぞ。」
「はい。」
各チームのミーティングが終わり
試合がはじまろうとしていた。
「龍。ジャンプボールは一年な。お前がやったら誰もとれねえよ。」
「あぁ構わないよ」
「あのー…虎ノ介先輩。たぶん羊太が飛ぶんなら一年でも取れるやついないと思います…」
「あ…」
「さっさとやるぞ虎。罰ゲーム楽しみにしてろよ?10分間の2ピリオドでやるからな」
試合開始!!!
ジャンプボールを制したのはもちろん羊太だった。
羊太のパスは一年生に渡る。
バスケ経験は中学から、一年滝本だ。
滝本はまず龍広を見た。
龍広に回せば確実に点がとれる
そう思った滝本は3Pエリア内に入った龍広にパスをした。
「わかりやすいな!一年は!!」
虎ノ介が滝本のパスをカットしボールを奪う。
「宗馬!!」
「ナイスパスです先輩!!!」
宗馬は虎ノ介のパスを受け取るため振り返った。
その時!ひとりの影が視界を塞いだ!
「しゃぁぁぁあ!」
早人だった。鬼の形相で早人は虎ノ介のパスをキャッチした。
「な、あいつなにしてんだ!俺のナイスパスを」
「お、おいお前!えーーっと橘!
はやくパスをくれ!」
予想外のことにうろつく虎ノ介と宗馬。
そんな中早人は
「しまった!今のは俺へのパスじゃないのか!」
「あたりめえだろ!!!お前今さっきまでいなかったじゃねえか!」
虎ノ介がツッコム。
「えーーっと。宗馬くん。パスだっ!」
早人は思いっきり振りかぶりパスをだした。
「へっ?」
バチんっ!と音を立てて宗馬はボールをなんとかキャッチした。
「いってえええ。くそっ!なんなんだ。」
宗馬はゴールにむかって全力のドリブル
そこに羊太が立ち塞がる。
「決めさせない」
シュートモーションに入る宗馬を羊太が飛んで壁になる。
だがしかし羊太の前に宗馬はいなかった。
「羊太の癖だぜ。試合の最初は絶対に力んでフェイクにかかる。」
スパンっと宗馬のシュートが入った。
‘‘虎チーム2点先取’’
「あいつもなかなかやるな。」
龍広は宗馬のプレイを見て一年生への期待が高まった。
滝本にボールが渡り龍広と羊太が中に入った。
滝本は羊太にパスをする。
羊太はボールを受け取りシュートを放った。
羊太のディフェンスについていた一年は触ることすらできない。
‘‘2ー2の同点’’
羊太の圧倒的な高さは、フェイクを必要としなかった。
早人というハンデを背負いながらの試合はここから先一方的な物になっていく。
試合の邪魔ばかりする早人に呆れながら、チーム虎も全力を尽くすが龍広と羊太。二人の巨人を相手にするのは虎ノ介にも限界があった。
前半も終盤にかかり
チーム龍の16点目を決めたのは
ついこの前まで中学生だった男のダンクだった。
16ー6
羊太の一年生離れした圧倒的な力を見せつけ前半が終了する。