第24話『美咲の決意』
「ハル、原田さん。本当にごめんなさい」
杏ちゃんが泣き止んでようやく落ち着いた頃、杏ちゃんと彼女の率いる女子達は私と絢ちゃんに深く頭を下げた。
「私はもういいよ。卯月さんが早く目が覚めるといいね」
「目が覚めたときには連絡して。私も卯月さんに会いたいから」
「……ありがとう。ハル、原田さん」
ようやく、杏ちゃんに笑顔が戻った。私の大好きな笑顔。
卯月さんが目を覚ましたときには、杏ちゃんに厳しい現実が待っているかもしれないけど、その時は私や美咲ちゃん、絢ちゃんが彼女を支えていこう。
「今日は杏ちゃんと一緒に帰ります。杏ちゃんの側にいたいので」
「……ありがとう、サキ」
「お礼を言われるほどではありませんよ。……あと、原田さんに言いたいことがあるのですが、いいでしょうか?」
「何かな、広瀬さん」
美咲ちゃん、絢ちゃんに何か言いたいこともあるのかな。
「手紙の件、本当に申し訳ありませんでした。原田さんの気持ちを全く考えず、私利私欲でこんなことをしてしまって」
「……卯月さんが眠っている過去に間違いはないからね。私は気にしていないよ」
「そうですか。ありがとうございます。それともう1つ」
「何だろう?」
「……もし、原田さんが遥香ちゃんを悲しませたときには、遥香ちゃんは私の彼女にするつもりですから。そのくらい、遥香ちゃんのことが好きなので」
美咲ちゃんは何度も私のことを好きだって言っていた。今までは友達としてだと思っていたけど、今の一言で本気だと分かった。友達としてではなくて、1人の女性として私を好いている。そして、相当な覚悟を持っていることを。
「……分かった。肝に銘じておくよ」
「覚えていてくださいね。杏ちゃん、帰りましょうか」
「そうだね。じゃあ、2人とも……また月曜日に」
杏ちゃんと美咲ちゃんは私達に手を振って、手を繋いで教会を後にしたのだった。
時間は午後3時半か。まだ帰るには早い時間だけど、これからどうしようかな。
「……遥香、原田さん。俺と奈央はここで失礼するよ。せっかく会えたから4人で遊んでもいいとは思うけど、今はデート中なんだろ?」
「まあ、そうだね」
杏ちゃんのことがあったから、すっかりと本来のことを忘れていた。絶叫マシンに乗ったり、お化け屋敷で驚いたりしたことが遠い昔のように思える。
「せっかく遊園地に来たからね。色々あったけど楽しまないと損だよね。まだまだ時間もあることだし、遥香ちゃんと原田さんも楽しんで」
「うん、分かったよ。奈央ちゃん」
「じゃあ、私と隼人は行くね」
そう言うと、奈央ちゃんはお兄ちゃんに腕を絡ませながら教会を出て行った。あの様子だと少しは進展したと見ていいのかな?
杏ちゃんの連れてきた女子達も帰って、教会に残ったのは私と原田さんの2人きりになった。
「とりあえず、私達も教会から出ようよ。外の空気を吸えば気分もすっきりするし」
「……そうだね」
そして、私と絢ちゃんは再び手を繋いで、教会を後にしたのであった。