第45話『3日目の朝-前編-』
8月26日、月曜日。
「うんっ……」
ゆっくりと目を覚ますと、そこには直人さんの姿があった。
「直人、さん……」
「……起こしちゃいましたかね、遥香さん」
直人さんがそう言うので、私は静かに首を横に振った。今までぐっすりと眠れていたし、自然と目を覚ますこともできた。
「……いいえ。ただ、目を覚ましたときに直人さんがいることがこんなにも嬉しいなんて」
直人さんが側にいることに安心感を覚える。
そして、私は直人さんに目覚めのキスをする。
「……ふぅ、やっぱり直人さんはいいですね」
「……そいつはどうも」
私は直人さんのことをぎゅっと抱きしめる。彩花さんの体だからか、直人さんと肌が触れると安心感を抱く。
「直人さん、とても温かいです」
「俺もさっきまで寝ていましたからね。それに……今の遥香さんとのキスで体が熱くなってしまったんですよ」
私とキスをしてそうなってくれることが嬉しかったりする。
「そういえば、遥香さんが起きる直前、遥香さんの夢の中で、絢さんがあなたに嫉妬していたようで、キスばかりしていましたよ」
そういえば、夢の中で絢ちゃんが凄い勢いでキスをしていたような。
「……思い出しました。夢の中でも直人さんとキスをしたら、それを見ていた絢ちゃんが嫉妬してキスをしてきたんです」
「……な、なるほど」
「自分の姿が見えるところでキスをするというのは、なかなか不思議な感じでした」
「つまり、彩花の姿で俺とキスをしたんですね」
「ええ」
そのときの彩花さん……どんな表情をしていたのかな。直人さんや絢ちゃんばかり見ていて……最も見ておくべき人を見られていなかった気がする。
「……あの、直人さん。夢の中でそういう夢を見ていたってことは、寝ぼけて直人さんにキスをしていたってことでしょうか?」
「いえ、そういうことはありませんよ。寝言を言っていただけで。普段は寝ぼけて絢さんにキスをしてしまったりするんですか?」
「いいえ、そんなことはないです。ただ、彩花さんの体に入っていますから、普段はしていないことをしてしまっているかと思いまして」
「彩花も寝ぼけてキスをする、ということはありませんね」
寝ぼけてキスをする子はさすがにいないのかな。
そういえば、直人さんの笑顔って意外と可愛らしい。
「私、シャワー浴びてきますね。直人さんも……一緒にどうですか?」
「お言葉に甘えて一緒にシャワーを浴びましょうか」
「分かりました! では、さっそく」
私は直人さんの手を引いて浴室へと連れて行く。シャワーを浴び、体も気持ちもさっぱりとして大事な一日を過ごすことにしよう。
今日、氷高さんと決着を付けることができるのかな。そして、彩花さんと体を元に戻ることができるのかな。それは全て私達次第……なんだろうけど。そうなるように頑張っていこう。