表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

紅葉橋桔梗との談笑2

 「つまり、桔梗の家はお金持ちなのか」

 「まあ平たく言ってしまえばそうですね。知りません? 紅葉橋って。結構有名なんですよ」

 「あんまりテレビを見ないからなーぼくは。そういえば聞いたことあるような……」

 気がしたけど、やっぱないわ。ごめん桔梗。

 「うちの一族は代々日本経済に大きく貢献してるんです。自分で言うのも変ですが」

 「いや、誇るべき事だと思うよ。桔梗もやっぱりそういう方向に進むの?」

 「いえ私は、あまり頭は良くないんです……」

 「ふぅん。もし良ければぼくがいつでも勉強を教えるけど、それでどうにかなるんなら最初からやってるよな」

 「すいません……」

 「他に夢でもあるの?」 「あるにはあるんですけど……。まだ誰にも言ってないんです……」

 「そっかー。叶うといいな」

 桔梗は柔らかくはにかんで小さな声で「ありがとうございます」と言った。

 「志乃森さんには何か夢はありますか?」

 「ぼくの夢……?」

 考えたこともないな。

 「夢、ねぇ…………。……中学校の教師かな」

 「教師ですか。そのこころは?」

 「だって中学生が一番かわいいだろ?」

 「ふふ、志乃森さんらしいです♪ 叶うといいですね♪」

 「ありがと♪ とりあえず携帯電話を閉じてポケットに仕舞おうか♪」

 間一髪。

 ぼくは人生を棒に振らずに済んだ。


 数話前に参照した通り、桔梗の髪は金色だ。名前からはあまり外国人的なイメージは湧かないが、顔立ちは確かに、少しだけ日本人離れしているように見える。

 「桔梗の髪は地毛なのか?」

 「ああ、これですか? はい。私の母方の祖母がヨーロッパの生まれなので、これはその遺伝です」

 「じゃあ桔梗はクォーターってことか」

 「そうなります」

 「にしては髪の毛に遺伝しすぎだろ……」

 「はい! 姉妹の中では一番色濃く受け継いでるんです」

 文字通り、色濃く。

 「姉妹がいたのか」

 「はい、正しくは兄姉妹ですね、兄が一人、姉が一人、妹が一人。兄はすでに父の会社で働いています。姉は舞台役者です」

 「妹は?」

 「…………」 「なんだよその目は」

 「いえ……」

 「まさかぼくをロリコンだと思ってるのか……?」

 「!? いやそんなこと全然! 全然思ってないです! 妹は今4歳です!」

 「4歳でもOKな人だと思われてたんだ……」

 「思ってないですって!」

 みんな随分歳が離れてるんだな。余計な詮索はしないでおこう。

 「まあいいけど……。それより、もう寒くなってきたな。そろそろ部屋に戻った方がいい」

 「は、はい。そうですね」

 「楽しかったよ。ぼくの病室は505号室だ。ぼくが恋しくなったらいつでも遊びにおいでよ!」

 「ぜったいいきません」

 「……。んじゃまた」

 やるせない気持ちでその日は別れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ