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 違和感に気付いたのはつい先ほどの事だった。

 ん?

 なんかこれ、話数がどんどん減ってね?

 なにこれ!? もしかして僕の寿命カウントダウン!!?

 やめてよそういう演出!!!

 もっと生きたいよ!!

 やめて!!!


 グーグルで調べた結果、そうではないらしい。

 いやほんとインターネットって便利。近代文化万歳。

 さすがに0になったら何が起こるかはまだ分からないけど。

 ぼくはまだ生きていられるらしい。

 良かった良かった。

 つかぼくの病気って一体何なんだ。それだけはグーグルを使っても出てこなかった。なぜだろう。

 考えてないからだろうか。

 少なくともよく分かんねー理由で殺すのはやめてほしい。

 そういう方向性スタンスではやってないから!


 僕の入院生活について特筆すべき事も特にないのだが、間を持たせるために強いて語るとすれば彼女とのいちゃこらラブラブトークを差し置いて他にないだろう。

 彼女とはずばり、1話(5話?)で少しだけ参照した『可愛すぎる看護師』こと、美波みなみ 鳴海なるみの事である。

 みなみなるみ。無駄に語呂がいい名前シリーズ第2弾!!

 どっちが苗字か分からないシリーズ第1弾!!

 流行らねぇな!!


 あれはいつだっただろう。

 ぼくが入院して2ヶ月とちょっと経つ頃だろうか。

 姉を巡って父とバトルし、圧勝した日の次の週あたりだったかな。

 「志乃森さーん。点滴の時間ですよぉー」

 「すー……すー…………」

 「……………………寝てます?」

 起きてます。

 「すぴーーーー…………」

 「……………………」

 美波さんはぼくの肩を軽くゆする。

 「あのー……」

 「すーすー」

 ただのイタズラ心だった。

 これが他の人――例えば剛田さん――だったら、「……………………寝てます?」の時点で「は!? 寝てねーけど!? 起きてるし!! 超起きてるし!! 逆にぼく寝た事ねーし!?」とか言う風にすぐさまネタばらしタイムだが、美波さんに限ってはそうは問屋が卸さない。

 どうもぼくはSかMかでいうとS寄りで、好きな女の子は苛めたいタイプらしい。

 苛められる女の子にしてはたまったもんじゃねーな。

 『苛められる』から『弄られる』に変えたらちょっと卑猥になるな。今度からそうしよう。

 そういえば今ふと思い出した。

 かつてぼくには幼稚園の頃から仲のいい女子がいた。

 その女の子は胸が小さく、中学生になってからその事をコンプレックスにしていたらしい。

 そんな事は露知らず、いや本当は知ってたんだけどあえて、ぼくは彼女に「なあ、おっぱい知らね? 知らないか。すまん、忘れてくれ」とか「NO OPPAI NO LIFE……(耳元で愛を囁くように)」とか「HAHAHA!これがジャパニーズおっぱい!? こいつぁ傑作だ!!(映画の吹き替え版風に)」とか「ぼくの友達に胸が大きいことをコンプレックスにしてる奴がいるんだ。そこまで胸を小さくする秘訣は何なんだ?」とか、とにかく色々と馬鹿にしていたそんなある日――――。

 学校での昼休みの事だった。

 「オーウ、ジュリエット。君はどうして貧乳なんだい……?」

 「……………………して」

 「ん?」

 「もーいい加減にしてよ!!」

 「…………え?」

 「私もう耐えられないよ!」

 辺りは急に静かになる。みんなの注目がぼくと彼女に注がれる。

 「ご、ごめんって……。さすがに度が過ぎたよ…………」

 その時だった。


 「いっつもいっつも所かまわず私のおっぱい弄らないでよ!! 芳乃くんさいてー!!!!」


 !!??

 辺りはざわめく。

 「ちょ、ちょっと待てその言い方だと語弊が……」

 「言い訳する気!? 人のおっぱいをあれだけ弄っといて何それ!! 信じらんないよぉー!!」

 「いやだから違……」

 「もう知らないよー!! ちくしょー!! 芳乃くんなんて巨乳に挟まれて病院送りになっちゃえぇー!!!」

 かなり遅い全力失踪で去る幼馴染み。

 一人取り残されるぼく。

 凍てつく空気。

 職員室に呼び出されるぼく。

 あの少女はまだ元気だろうか。

 ――――また、会いたいな。

 もし会えたなら往復ビンタがしたい。

 いや、ぼくが悪いんだけれども……。

 ちなみにぼくが入院してるのは巨乳に挟まれたからじゃないぞ?

 そんな伏線回収は絶対に嫌だ。


 逸れすぎたようだ。

 話を戻そう。

 チチンプイプイ戻れ話!


 「あの……起きてくれないと点滴うてないんですけどー……」

 「すぴー……あと5分しか食べられないよ……むにゃむにゃ」

 「どんな活動限界ですか……」

 冷静に突っ込まれた……。2ヶ月かけて考えた渾身の寝言なのに……。

 「えーとこんなときどうすれば……」

 薄目を開けてオロオロする美波さんを堪能する。可愛い。楽しい。

 ところで、ぼくはよく「人を見かけで判断するな」と言われる。

 ぼくは可愛い女の子が大好きだ。付き合うなら可愛い女の子がいいし、可愛い女の子とイチャイチャしたいし、可愛い女の子のお腹に舌を這わせたりしたいと思っている。

 よく人は「人は見た目じゃない! 性格だ!」という戯言を抜かす。――それは筋違いの偽善だよ。

 可愛い女の子が何もせずに可愛い女の子たりえると思ったら大間違いだぜ。

 確かに、顔だけ切り取れば或いはそうなのかもしれないが、ぼくの言う『可愛い女の子』とは、顔から体の隅々に至るまで完全無欠に可愛い女の子の事だ。

 ボディーラインというのは普通に生きていて勝手に整うものではない。日々こつこつと堅実な努力を重ねた末に出来上がるものなのだ。

 それを何、『人は見た目じゃない!』だ? それは可愛い女の子への侮辱だぜ。真面目ぶって真実ぶって他人の努力を冒涜するんじゃねーよ。『大事なのは性格』だ? それこそただの―――生まれもっての才能じゃねーか。

 性格が良いのを悪く言ってる訳じゃないぞ?

 可愛いのは才能じゃねーよ。

 “努力じゃどうにもならない”ってのは努力じゃどうにもならないと諦めて最初から何もやってない奴の台詞だ。

 つまるところ、ぼくが後世に残したい思いってのは。

 『美しさを羨むな。その醜さは、お前の怠惰(つみ)への罰なのだ』ということだ。

 これは何も可愛さに限った話じゃない。

 勉強だって運動だって何だってそうなんだよ。

 ベストを尽くせ。全力を尽くせ。

 体が限界なら頭を使え。

 ぼくが言いたいのは、そういう事だ。


 またまた話が逸れすぎた。

 チチンプイプイ戻れ話!

 えーい!!


 「あわわ……どうしよう。とりあえず――――」

 「すぴー」

 「――――剛田さんを呼んでこ

 「ふぁーーーーよく寝たー! もう朝かよ! 早えーなおい!!」

 「あれ志乃森くん……起きたんだ」

 「あれ。美波さん。偶然ですねこんなところで」

 「偶然じゃないよ必然だよ。点滴の時間だよー」

 「ありがとうございます。いやー美波さん気が利きますねー」

 「いやこれ仕事だから……」

 ここだけの話。美波さんは可愛いだけじゃなく性格もいいのだ。

 こんな可愛い子に彼氏がいるわけがない。

 「いつもいつも点滴うって痛くないの……?」

 「平気ですよ。ぼく痛覚をコントロールできるんで」

 「中国人かっ」

 「美波さん中国人を何だと思ってるんですか……」

 中国人みんなが超人ってわけじゃねーよ。

 「やっぱり病院て色々不便でしょ?」

 「そうですね……。不便というか不自由というか……」

 「ここで働いてる人間としてどうかと思うけど……ご飯とかあんまりおいしくないでしょ? お家のご飯が恋しくならないの?」

 「大丈夫ですよ。ぼく味覚をコントロールできるんで」

 「インド人かっ」

 「美波さんインド人を何だと思ってるんですか……」

 アジアの神秘すごすぎだろ。

 「まあ―――それはそうと、何か不自由があったらすぐに呼んでね! いつでもどこでも駆けつけるから!!」

 ラノベの主人公かあんたは。

 「大丈夫です。ぼくにとって、あなたと出会えた、それだけで……何の不自由もありませんから」

 「ん? 何か言った?」

 ラノベの主人公か。

 あんたは。

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