少女が天使と呼ばれた理由③
その日の午後、ぼくと桔梗は打合せした訳でもなく屋上に集った。
「気に入らねぇな……」
「何がですか?」
「姫等木の奴だよ。あいつに関してひとつ分かったことがあるんだ」
「分かったこと?」
ぼくは例の件を桔梗に詳しく説明した。
姫等木ユナが笑顔を見せないことを。
「なるほど……。たしかに不思議です……。アイドルは笑顔を見せるのが仕事みたいなものなのに……」
「事務所の意向か、あいつ自信の性格か……。どちらにせよ、気に入らんな。ぼくは出会った人間みんなを笑顔にしたいんだ」
「なんかサラッと格好いい事を言いましたね……」
? 言ったか?
「よし。決めた!」
「?」
「ぼくはあいつを笑わせてみせる」
「…………え?」
「無論のこと桔梗にも手伝ってもらうぞ。ケンにも協力してもらおう」
あまりに突発的な思いつきだったので、桔梗は唖然としていた。巻き込むのは気が引けるが、仲間外れにするのも申し訳ない。
「別にいいですけど……。私、他人を笑わせるのはあまり得意じゃないですよ?」
「大丈夫。ぼくがいれば百人力だから」
「それはゲストの台詞です」
桔梗と話し合った結果、作戦は明日からということになった。
明日、僕の千客万笑必殺ギャグがとうとう解禁されるのだ。