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少女が天使と呼ばれた理由①

 「よぉ志乃森」

 久方ぶりの登場。前話から数日後、ぼくの数少ない友人、管川 稜がぼくの病室にやってきた。

 偶然ではない。ぼくが呼んだのだ。

 「よー管川。“あれ”持ってきた?」

 「おう。最新版だぜぇー」

 そういって管川は持ってきた鞄の中からある雑誌を取り出し、ぼくに手渡す。

 雑誌の表紙を飾っているのは姫等木ユナ―――先日ぼくが出会った、超人気アイドルであった。

 「やっぱこの人、人気なんだなー」

 「おう! 本当は5人組アイドルなんだけどグループはユナちゃん一人で支えてるようなもんだ。ついこの前、グループの人気投票があったんだがよ、他の4人の票を全部足してもユナちゃんの1/3にも及ばなかったっていう悲惨な結果だったので票数は公になってないって噂だぜ」

 「常軌を逸しているなー……」

 「ユナちゃん一人で他のアイドル48人分の人気があるとも言われてるな」

 「そうなんだ」

 やけに具体的な数字だな。

 「しかし、今まで俗世にまったく興味がなかった志乃森が急にどうしたんだ?」

 「ぼくを仏教徒みたいに言うなよ……。いや、特に理由はないよ。最近名前を頻繁に聞くから少し興味が出ただけだ」

 「その好奇心は正解だったな。ユナちゃんを知らないなんて人生の10割を損してるぜ」

 「今までの僕の人生って一体……!?」

 雑誌をぱらぱらとめくる。『姫等木ユナ特集』と大々的に書かれている。ふむ、確かに、他のページのアイドルやらモデルやらと比べても一線を画した存在感を放っている。

 「人気が出るのも納得だな」

 「だろだろ!?」

 「ああ、未熟さと艶麗さが奇妙な形で調和している。ぼくはロリコンではないが、なんか引き込まれる魅力があるな……」

 「グルメリポートみたいに言うな……」

 何度か特集ページを反芻はんすうしたところで、妙な違和感を覚えた。

 いや、むしろ、それには違和感が全くなかった。逆にそれが違和感になったのだ。

 なんだろう、この奇妙な感覚は。

 完璧すぎる。

 彼女は完璧すぎる。

 だからこそ、不完全。完璧ではあるが、完全ではない

 人間ならだれにでもあるものが、彼女には欠損している。



 「この娘、どうして笑顔で写ってる写真がひとつもないんだ……?」




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