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5か~

「結ッ果ッ!発ッ!表ゥ!」

「いや。なにそのテンション?キモい」

「いや…それ酷くない?」

 リョウの部屋に集まった二人。というかやって来たリュウは部屋に入るなりテンションな高く宣言した。結果はキモいと斬断されてしまった。

「おぉぉぉふぅ。マイパートナーそれはちょっと酷くないかい?」

「大丈夫。それ以上にキモいから問題ない」

「それはどう考えても問題ありだろーよ」

「そうだね。君のそういうところ全く慣れる気がしないからずっとキモいと言い続けてあげるから感謝してね」

 乳鉢に入れた草を磨り潰しながら言葉を返した。

「あぁもう!その事はもういいじゃねーか!とにかく今日の成果を確認しようって事だよ」

「それならそうと言えっての。ちなみにこっちは見ての通り予定の量より少し多いくらいの数は手に入ったよ。流石に質までは問えないけど、今晩中には何とかしてみせるよ」

 もちろんしゃべっている間も手を止める気配はない。止めて喋るだけ時間の無駄と思っているリョウにとって、それは当然の行動。そのあたりの事を理解しているリュウももちろん文句なんて言わない。むしろそれを放っておいて自分の話を始める。

「こっちは昨日の話に出けきた人物全員の屋敷を見てきた。とりあえず屋敷内にある資料なんかに手を出すのは潜入した痕跡を残す可能性があったから、ちゃんと見てきた訳じゃねーが、その屋敷の間取りや雰囲気と気配から見て、召喚術をやるには少々問題のある建物ばかりだった。……まぁ詰る所、怪しいのはあの城の内部って事だけだ」

「まぁ…やっぱりそうなりますよね」

 リョウは予想していた答えを聞いて気付かないうちに、力が入ってしまう。

「そこは予想通りなんだから仕方ないだろ。むしろこんな事を個人でやってるやつの方がスゲーわ」

 リュウがそういうのも無理はない。召喚術と呼ばれる召喚魔法の類、こと生物を召喚する時などについては多大な労力を強いられることになる。例えば魔力にしてもそうだ。

 普通に魔法を使うならコップ一杯の水を汲むくらいの量でいいとする。これだけの量で出来る事。それは例えば人間の皮膚を全身やけどにしてしまう。例えば人と同じ大きさの土人形を作る事が出来る(動かすにはまた別の量の魔力が要必要)。例えば人が立っていられないほどの突風が襲う。それほどの超常現象を産みだす事が可能になる。

 しかし召喚魔法となると別である。魔力はコップ一杯どころ収まるはずが無い。例えば平均の成人男性、おおよそ一八〇センチ八〇キロの男性を召喚すると仮定する。その場合必要な魔力はよく比較で表される二五メートルプール(詳しく言えば二五メートル×一〇メートル×一五〇センチ程の容積)の魔力が必要となる。これほどの量になると一人賄える人間など滅多にいない。他の種族であれば可能性はある。例えばエルフや妖精族などは多くの魔力を身の内に内包されていると言われるが、この町に住む宿屋を経営している二人についてはヒト種のそれより少し多いくらいしかなかった。その分卓越した技術によって、ヒト種が出来ない事を平然とやってしまう訳なのだが…それはまた別の話である。

 次に必要になってくるものは場所である。これはとても重要になってくるもので、一瞬のうちに魔法陣を展開できるのであれば問題とならないのだが、そんな事は高位の魔法使いでもなければ実現は不可能である。ではどうするのか?答えは簡単である。魔法陣を直接地面または布に書きこむのである。成功率を望むのであれば地面に直接書き込む方が舞年である。その理由として耐久力があげられるのだが…ここで詳しい説明をするのは控えておいた方が、後々愉快な展開になるのではと愚考する。

 つまり何が言いたいかと言えば、リュウが調べた結果、それが出来るような場所や財力を持っているのは城にいる人間というより国ぐるみ以外不可能だと言う事だった。

「まぁ…予想道理の展開乙。どうもありがとうございますとでも言っておいたらいいじゃない」

「まぁ…そうだな。しかしどうする?」

「どうするもなにもやることは決まってるだろ?」

 リョウは乳鉢から目を離さず応えた。

「じゃあ決行は明日の夜でいいな」

「それでいい。宿を引き払った後になるから、ここの人たちにも迷惑はかからないだろう」

「じゃあなにも気にせずやれるな」

「あぁ…殺しをするとしても最低限。召喚を出来る奴のみ狙う」

「もちろん」

 そこでリョウは手を止めた。綺麗に磨り潰されたモノに少しの水を垂らす。それを横に置いてある布を被せた器に入れ替えた。それを布で絞り濾しきった液体が器を満たした。

「それでどのくらいになるんだ?」

「あぁ…この後魔法使って加工するんだけど…まぁ大体二百くらい行けるんじゃないか?まぁ環境次第だけど」

「それでも充分だろ俺が先行して潰して行く」

「え…またその行き当たり。前の時はそれで酷い目にあったと覚えてないのか?」

 ジト目で睨むリョウの姿。思わず「う」っとたじろいでしまった。

「思いだせないのかな?リュウ」

「いや…覚えてるよ。あぁ…確かにアレは痛ましい事故だった」

「事故だったじゃないだろう!!」

 リョウは思わずリュウの首を締めあげ、

「お前のお陰で俺がどんな目にあったか思い出させてやろう。そうだまずはここにある麻痺薬でも飲んでもらおうか!きっと美味いぞ~、何と言っても出来たて絞りたて一品だ!さぁ遠慮せずグイっといこう!」

「ちょ!まてリョウ!冗談だろう!?」

 その時リュウが見たリョウの顔。その顔はとてもイイ顔であった事に、前回の失敗を激しく後悔するのだった。





「さぁ…潜入する前に前回のおさらいをしようか」

(あぁ…やっぱり根に持ってたか)

 おさらいという言葉にビクッと反応してしまうリュウを無視しリョウの話は進む。

「前回洞窟を砦として使っていた犬系の獣人がを一網打尽にすると決めた。その時お前が出した策は…絶対に忘れない」

 リョウは拳を握る。その拳に込められる力は半端なかったとリュウは事後に語る。

「あの強烈な刺激臭…一週間は身体から落ちる事のなかったあの刺激臭。具体的に言うならシュールストレミングとタメをはる程の刺激臭。それを用意した俺も俺だけど、それに騙されたのも俺。だが、その危険を分かっていて用意させタイミングも…リュウ、お前に任せてしまった俺の馬鹿さ加減を今でも後悔している……。だからこそ今回は失敗が無いようにキッチリ決めておこう!」

 リョウを見ない方向で遠くを見つめるリュウ。もう諦観の念しかない。リョウとは長い付き合いではないけど、こうなると止まらなくなってしまう事を知っている。だからこそ、ここは一気に諦めてしまった方が早いとリュウは判断したのだった。


「さて…前回の反省はこれくらいにして、今回の作戦についての話…というか確認だな」

 キッチリ三十分ほどで終わった前回の反省大会。深夜の道端でやっているというのによく見つからなかった…そう安堵していたリュウだが、

「なんか勘違いしているようだけど、このお場所にはキッチリ人避けの結界に俺達二人が見えないように認識阻害家の魔法に音も漏れないように『消音』の魔法も掛けておいたからな。ついでに言えば匂いもばれないように『消臭』魔法も掛けておいた、それも多目にな」

(そんなこと考えてんじゃねーよ!)

 心中で毒づきながらも、口に出すことは決してしない。口に出してしまえばそれこそ酷い目にあう事が、過去の経験からも分かっていたからだ。

「ともかくおさらいだ。今回の目標はこの城の地下にあると思われる召喚の儀式場破壊と、それに関する資料の破棄」

「それと召喚できる奴の殺害な」

「…その通り」

 改めて今回の潜入ミッションを確認する二人の顔からは、先程まで見られた笑顔は全くない。あるのは憎悪に満ちた怒りの顔だ。

 ここまで二人が召喚魔法にこだわる理由。それは二人がこの世界へ突然呼びだされた召喚者であるという事だ。

 二人はそれぞれ違う場所で召喚され、偶然出会い、各々の境遇に共感。さらに目的が一致したから共に旅をしている。

 今更二人の旅の目的を語るのは遅いかもしれない。それに気付いていると思われる。それでもはっきりしておかなければならないだろう。彼ら二人がこの異世界を旅する理由を。

 リュウとリョウ彼ら二人がこの異世界を旅する理由。それは自分達と同じような被害者を出さない事!これが二人の旅する理由なのである。

 ついでに元の世界に変える方法探していると言えば間違いないのだが、それはあくまでおまけに過ぎない。彼ら二人は元の世界に未練などほとんどないからである。なのに元の世界に変える方法を探す。もちろんそれにも理由はある。

 もし、仮にである。自分達同郷の人間が帰郷を望んだ時、元の世界に戻れる手段を持ち合わせて置くのは無意味ではない!と二人は考えたのだ。その為、二人ははこの二大目標の元、自分達の行動を選択し、ぐーたらと未だ名前も分からない異世界の世界を楽しむことにしたのだった。

「それじゃあ――」

「問題ない」

 その言葉をリョウの魔法『浮遊』によって、二人は裏路地から高く高くそれへ昇って行く。闇色に染められて服を纏う二人。奇しくも今夜は新月の夜。二人の姿はさらに人眼には付かない。夜目が利く種族の兵士がいたとしても発見が遅れるだろう。

 その闇に隠れた二人はゆっくりと城の方へと近寄って行く。正直この国の名前なんて興味が無い二人からすれば、元の世界では世界遺産にも登録されそう目前に迫った城も、ただのでかい石の家だ。この某ネズミの国の象徴の城のような佇まいであってもそれは変わらない。

「降りるぞ」

 視力を強化し着地地点に見回りの兵士がいない事を確認したリュウ、先行して城内へのルートを確保に走る。

 その様子を見ながらリョウ魔法鞄から「とある粉」をとりだす。粉の量は小さい革袋に三つ。同時に肉体を魔力で強化して着地に備えた。

 一方で先行して潜入ルートを確保していたリュウは、油断なく周囲を警戒する。今のリュウは野生の動物のそれと同じ、それくらい敏感な感覚となっている。嗅覚や聴覚・視覚・彼の五感は研ぎ澄まされ、第六感と言って差し替わりが無い程警戒力を有している状態となっていた。

 そこにようやく追いついてきたリョウが視線だけで合図した。それを理解したリュウは、リョウの作業が終わるまで周囲の警戒を続けるのだった。



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