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幼馴染み+α

年越し。

作者: 悠里

よかったらシリーズの方も読んでれるとすごい嬉しかったりします。

 とうとう2013年がやってきた。

 人類は滅亡しなかったし、宇宙人も襲来してこなかった。

 至って平凡。いいんじゃないかな。

 

 大晦日は月くんの家で過ごした。

 紅と白の歌合戦と笑うことが許されないあの裏番組を交互に観てたり、こたつに埋まりながら机の上に置いてある蜜柑を食べたり、おばさんの作ってくれた年越しそばを食べたり、月くんとぼそぼそ会話しながら、まあ、ダラダラしていたのだ。

 そういえば久々に月くんの家で年を越すことになったから、おばさんがなんか張り切っちゃってて大変だった。月くんのバツの悪そうな顔って珍しいから写メでも撮っておけばよかったかも。


「ねえ葉」

「なに?」

「明日、初詣一緒に行こうか」

「そうだね」


 二人共視線はテレビだけど、ちらりと横を見たときの月くんの嬉しそうな顔を見てなんだかこちらも嬉しくなる。


「・・・来年もよろしくね」

「こちらこそ」


 なんとなく、どちらともなく手を握ってみる。

 雰囲気に任せて私たちは見つめ合って、・・・そして。


「葉ちゃん、明日初詣行くな、ら・・・」


 まあ、お約束ってことで。

 もう少しで触れ合う唇がもどかしい。が、そんなことを考えている場合じゃなかった。

 二人して勢いよく顔をそらす。


「あら、お邪魔しちゃったわねえ」

 ニコニコと笑っているおばさんにすぐさま弁解をする。

「ち、違うんですおばさん!め、めにごみがあってその」

「ふふふふ、初々しいわ。いいわねえ、若いって」


 だめだ、もうやだ、穴があったら入りたい。羞恥心で顔から火が出そうだ。


「お、おばさん!私に何か用でございましょうか!!」

 ああ、あと三十分ほどで2012年も終わるのに、最後の最後で大失態を犯してしまった。もうだめだあ。


「ああ、そうそう。そうなのよ」

「・・・葉になんかあるの?」

 月くんは再びバツの悪い顔をしていて、なんとなくお母さんに弱いことを察してみる。現実逃避とも言うかもしれない。


「明日初詣行くならお着物着て行きなさい。着付けてあげるから」

「えっ」

「いいじゃん葉。着ていこうよ」

「えっ」

「ああ楽しみだわあ」


 おばさんはお着物ださくっちゃ、と部屋から出ていった。


「・・・似合わないよ。着物なんて」

「似合うよ。葉可愛いから」

「かわいくない」


 そうこうしているうちに、テレビはカウントダウンに入っていた。

 あと一分ほどで年を越すらしい。


「来年もよろしくお願いします」

 もう一度改めて月くんの方を向いて言う。

「こちらこそ、よろしくね。来年じゃなくて、ずっとだけど」

「・・・そりゃ、どうも」


 テレビから、おけましておめでとうございます、とアナウンサーの人が言っている。どうやら無事に年を越したらしい。


「あけましておめでと」

 う、と言おうとしたが言えなかった。

 なんかいきなり抱きしめてきたぞ。いつも唐突過ぎて心臓が持たない。


「あけましておめでとう、葉」

「・・・おめでとう、月くん」


 とりあえず、さっきの続きをしようか。


 耳元で囁く月くんに、きっと今年も振り回されるんだろうなあと考えつつ、近づく唇を受け止めることにした。





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